認知症介護あるある~岡崎家の場合~
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できないのに「できる」って言わないで! 要介護認定調査で夫婦バトル
要介護度が下がると…
普段とは別人のようにシャキッとしている父さんに、私と母さんがなぜそんなにハラハラするのかというと……父さんが何でも自分でできると調査員が勘違いしてしまったら、「たくさんの介護は必要ない」と判断されて要介護度が低くなり、毎月の介護サービスの限度額が下がってしまうかもしれないのです。
調査員は家族の話も聞いてくれるので、母さんは、本人の前でも「それ、いつもはできません!」と慌てて訂正します。母さんが必死になる気持ちも分かりますが、父さんにしてみれば、他人の前でプライドを傷つけられたようなものです。母さんにすごいけんまくで「まったく、ウソばかり言うんだから! 認知症なんじゃないのか?」なとど、衝撃的な言葉で抗議します。そして、調査員の前で夫婦ケンガが勃発するところまで含めて、岡崎家の「認知症介護あるある」なのです……。
苦手な質問には「いつもの父さん」
こんなふうに本人と家族の言い分が食い違うのも、おそらく想定済みなのでしょう。調査票には、認知症の人が苦手とする質問もちゃんと用意されています。
認知症の症状が進むと、時間とともに変化するものごとを把握するのが難しくなるといわれています。父さんもそうした質問となると、とたんに回答が怪しくなります。たとえば「今の季節は?」と聞かれ、春なのに「うーん、秋だねー」と答えたり、「あなたの年齢は?」という質問には、「83歳(本当は73歳。なぜ上にサバを読むのかは謎)」という調子です。
そんなトンチンカンな答えを聞くほど「ヨシヨシ」とニンマリしたり、「やっぱり認知症なのか……」としょんぼりしたり。数十分の認定調査の間、私と母さんの心の中は大忙しです。
上がっても下がっても複雑な胸の内
このハラハラ、ドキドキの認定調査に、主治医の意見書を加えて、コンピューターによる一次判定が行われます。この結果を基に、医療や福祉の専門家が集まる介護認定審査会が二次判定を下し、要介護度が決まるのです。
父さんの要介護度は、ここのところ要介護3~4をいったりきたりしている感じです。郵送されてくる通知を開いて、要介護4から要介護3になれば「あら、少し状態がよくなっている!?」と、喜んだ数秒後には「あ~、使える介護サービスの量が減るな~」と、心の中はどんより。
限度額を超えた分は全額が自己負担になるので、場合によっては、それまで使っていた介護サービスを減らさなければなりません。そのため母さんは「認定調査のとき、なんでも『できる、できる』って言わないでほしいわ~」と嘆くのです。
逆に要介護3から要介護4になると、「そっか、状態が悪化しているのか……」と落ち込む反面、「ありがたい、もっと介護サービスを増やせるぞ!」と、ホッとして、つい顔がゆるんでしまいます。
とにかく、介護保険の要介護認定の更新時期になると、調査から結果が届いた後まで、私と母さんの心の中は穏やかではいられません。これも「認知症介護あるある」なのでしょう……。(岡崎杏里 ライター)
登場人物の紹介は こちら
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kuro-nyan
要介護度についてはだんだんどこの自治体でも厳しくなっていますが 同じサービスを使う場合,介護度が上がると,負担も多くなるように なりました。
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