文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

認知症介護あるある~岡崎家の場合~

コラム

できないのに「できる」って言わないで! 要介護認定調査で夫婦バトル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

要介護度が下がると…

 普段とは別人のようにシャキッとしている父さんに、私と母さんがなぜそんなにハラハラするのかというと……父さんが何でも自分でできると調査員が勘違いしてしまったら、「たくさんの介護は必要ない」と判断されて要介護度が低くなり、毎月の介護サービスの限度額が下がってしまうかもしれないのです。

 調査員は家族の話も聞いてくれるので、母さんは、本人の前でも「それ、いつもはできません!」と慌てて訂正します。母さんが必死になる気持ちも分かりますが、父さんにしてみれば、他人の前でプライドを傷つけられたようなものです。母さんにすごいけんまくで「まったく、ウソばかり言うんだから! 認知症なんじゃないのか?」なとど、衝撃的な言葉で抗議します。そして、調査員の前で夫婦ケンガが勃発するところまで含めて、岡崎家の「認知症介護あるある」なのです……。

苦手な質問には「いつもの父さん」

 こんなふうに本人と家族の言い分が食い違うのも、おそらく想定済みなのでしょう。調査票には、認知症の人が苦手とする質問もちゃんと用意されています。

 認知症の症状が進むと、時間とともに変化するものごとを把握するのが難しくなるといわれています。父さんもそうした質問となると、とたんに回答が怪しくなります。たとえば「今の季節は?」と聞かれ、春なのに「うーん、秋だねー」と答えたり、「あなたの年齢は?」という質問には、「83歳(本当は73歳。なぜ上にサバを読むのかは謎)」という調子です。

 そんなトンチンカンな答えを聞くほど「ヨシヨシ」とニンマリしたり、「やっぱり認知症なのか……」としょんぼりしたり。数十分の認定調査の間、私と母さんの心の中は大忙しです。

上がっても下がっても複雑な胸の内

 このハラハラ、ドキドキの認定調査に、主治医の意見書を加えて、コンピューターによる一次判定が行われます。この結果を基に、医療や福祉の専門家が集まる介護認定審査会が二次判定を下し、要介護度が決まるのです。

 父さんの要介護度は、ここのところ要介護3~4をいったりきたりしている感じです。郵送されてくる通知を開いて、要介護4から要介護3になれば「あら、少し状態がよくなっている!?」と、喜んだ数秒後には「あ~、使える介護サービスの量が減るな~」と、心の中はどんより。

 限度額を超えた分は全額が自己負担になるので、場合によっては、それまで使っていた介護サービスを減らさなければなりません。そのため母さんは「認定調査のとき、なんでも『できる、できる』って言わないでほしいわ~」と嘆くのです。

 逆に要介護3から要介護4になると、「そっか、状態が悪化しているのか……」と落ち込む反面、「ありがたい、もっと介護サービスを増やせるぞ!」と、ホッとして、つい顔がゆるんでしまいます。

 とにかく、介護保険の要介護認定の更新時期になると、調査から結果が届いた後まで、私と母さんの心の中は穏やかではいられません。これも「認知症介護あるある」なのでしょう……。(岡崎杏里 ライター)

登場人物の紹介は こちら

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

column_aruaru-200re

認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

hino-117-fin

日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

認知症介護あるある~岡崎家の場合~の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

要介護度が上がることでデメリットも

kuro-nyan

要介護度についてはだんだんどこの自治体でも厳しくなっていますが 同じサービスを使う場合,介護度が上がると,負担も多くなるように なりました。

要介護度についてはだんだんどこの自治体でも厳しくなっていますが
同じサービスを使う場合,介護度が上がると,負担も多くなるように
なりました。

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事