大人の健康を考える「大人び」
医療・健康・介護のコラム
患者力(10)セカンドオピニオン 遠慮せず
このシリーズでは、元和歌山市医師会長で、田中内科医院(和歌山市)院長の田中章慈さん(71)に聞きます。(米井吾一)
「大人び」の記事を読んだという患者さんが、クリニックにやって来ました。私と同様に肺がんを患い、手術を受けるように言われたが、担当医と信頼関係が築けないといいます。「できれば、別の病院で手術を受けたい」と悩んだ末の訪問でした。
私は、「セカンドオピニオン」を提案しました。自分が納得のいく治療を受けるため、担当医とは別の医師に診断や治療方針について意見を聞くことです。そのためには担当医に紹介状や、検査結果などのデータをもらう必要があります。患者さん自身が依頼するのが普通ですが、「そんなことは、とても頼めない」と困った顔をします。それならばと、私が患者さんの代わりに連絡を取ってデータを送ってもらい、希望する病院への紹介状を書きました。
かつては「名の知れた病院で手術を受けるには有力者のコネが必要」などとささやかれた時代もありましたが、今では紹介のシステムが整い、全国どの病院にも紹介ができます。セカンドオピニオンを取るためにも、私のような開業医をどんどん利用してほしいと思います。
セカンドオピニオンに限らず、「こんなことを聞いてもいいの?」と気後れしたり遠慮したりする患者さんは少なくありません。でも大事なのは、患者さん自身が病気と真剣に向き合い、病気を治すためにどうしたいのかという意思をはっきり示すことです。そうすれば、医師はいくらでもサポートしてくれるはずです。
【略歴】
田中 章慈(たなか しょうじ)
1973年、和歌山県立医科大学卒。同大学助手を経て、和歌山赤十字病院第二内科副部長。85年、田中内科医院開設。2008年から13年まで、和歌山市医師会会長を務めた。日本臨床内科医会理事。
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