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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

視覚障害者のための公的相談窓口がある自治体

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視覚障害者のための公的相談窓口がある自治体

 40年余り眼科の臨床をする中で、視覚障害というものが、随分と社会の中では軽視されているなと思うことが少なくありません。失明やそれに近い人の不自由さは想像できるでしょうが、そこまではいかなくても、視覚がいくらかでも損なわれると社会生活、日常生活に直接影響してしまい、場合によっては、仕事まで奪われてしまいかねないことを、健常者はなかなか想像できないのでしょう。

 こうした広義の視覚障害者に対し、民間には当事者を含めたいろいろな組織や会合があり、互助的な役割をしているところもありますが、国や自治体は冷たいという印象を私は持っています。

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 しかし、そうした中で、世田谷区保健センター(東京都世田谷区)専門相談課の木村仁美さん=写真=らの取り組みは、大いに注目されるものと思い、お話を伺ったので、2回にわたって紹介します。

  若倉  まず、木村さんのバックグラウンドを教えてください。

  木村  私は大学では数学科を卒業し、システムエンジニアになったので、もともとは今の仕事と無関係なんです。交通事故でけがをして、リハビリテーションにより人間の機能が復活してくることを実感し、そういう領域に関心を持ちました。1990年(平成2年)に、現在の国立障害者リハビリテーションセンター学院(埼玉県所沢市)視覚障害学科に入りました。今は2年コースですが、当時はできたばかりで1年制でした。

  若倉  その後、視覚障害者の生活訓練のお仕事に入るのですね。

  木村  神奈川県厚木市の七沢にある神奈川県総合リハビリテーションセンターに勤務した後、子育てでブランクがありましたが、2005年(平成17年)、世田谷区立総合福祉センターの求人に応募しました。現在は、非常勤で、視覚障害者の生活訓練、利用できるサービスの紹介や、生活上の悩み相談も受けています。

  若倉  視覚障害者はもちろんですが、治療に限界がきている方や、治療はしていても視覚障害が進行性だったり、後遺障害があったりする方々は、たとえ法律的には障害に達していなくても、生活上は障害者と同等の悩みを抱え、救済が必要だと思います。でも、たいてい身の回りのことをするのが精いっぱいで、どこに行けばよいかもわからないことが多い。また、身体障害者手帳がないと利用できないサービスがあります。

  木村  身近に相談や訓練ができるところがあると、確かにいいと思いますが、自治体レベルではなかなか行き届いていないのが現状です。東京都内でも、視覚障害の専門家が対応する窓口を設けている地域は、世田谷区のほかには荒川区、武蔵野市です。私どものところに来られる方では、身体障害者手帳がない人も少なくありません。

  若倉  世田谷区保健センターでは毎月第2火曜日「見えない・見えにくい方の情報交流広場」というのを開催されていますね。どのような会ですか。

  木村  机といすだけを用意して、午後1時から3時間ほど、特にテーマを決めずに集まります。情報を持っている人がそれを提供したり、時には福祉機器の紹介があったりします。「どなたでも無料で参加可」としていて、毎回の参加者は20人くらいで、毎回2、3人が新規参加の方です。区外からもいらっしゃいます。

  若倉  なるほど、それはいい会ですね。個人の相談とはまた別の効果がありそうですね。

  木村  はい、すでに障害を受け入れている方々には、日々の生活のヒントを得るのに役立っているでしょう。まだ十分受け入れられない方々にとっては、障害を持ちながらも人生に前向きに取り組んでいる人たちの背中をみて希望が持てるのではないかと思います。(つづく)

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」(青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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