本田秀夫「子どものココロ」
医療・健康・介護のコラム
「ぎこちない」「手先が不器用」発達性協調運動症 同じ動きや声を繰り返す「チック症」…こころの問題と関連することも
小学6年生のGさんは、幼児期によく転んでけがをしました。今も、歩いていて机の角に体が当たって物を落としたり、ちゃんと前を見て歩いているのに段差につまずいたりすることがときどきあります。学校生活では、体育の時間が憂うつでなりません。ボールを投げる動作や蹴る動作がうまくできないため、球技は大の苦手です。ダンスも振り付けをうまく覚えられません。走るフォームがぎこちなく、短距離走は遅いのですが、持久力はあるので、中距離走や長距離走では比較的良い記録を出すことができます。
小学4年生のHくんは、手先がとても不器用です。字を書くことや絵を描くことがとても苦手で、一生懸命に書いても形が整わず、バランスが悪くなってしまいます。箸もうまく持てず、小さな物はうまくつまむことができません。洋服のボタンやファスナーの操作にも時間がかかります。学校では、図工の時間や作文の時間などがくると、表情が暗くなります。
小学3年生のIくんは、最近ギュッと目をつぶる動作をすることが増えました。走り回って遊んでいるときなどはそれほど目立たないのですが、授業中や宿題をやっているときなどには、この動作が増えます。親が注意すると、動作を止めることはできますが、しばらくするとまた始まります。
発達性協調運動症 苦手なのは「粗大運動」か「微細運動」か
今回ご紹介するのは、「発達性協調運動症(DCD)」と「チック症」です。
DCDの子どもたちは、 麻痺 などの神経学的異常がないにもかかわらず、身体の複数の部位を協調させて行う運動(協調運動)がうまく行えないために、日常生活や学業に支障をきたします。協調運動には、歩く、走る、姿勢を変えるなどの「粗大運動」と、スプーンですくって食べる、ボタンをはめる、ひもを結ぶ、鉛筆で字を書くなどの「微細運動」があります。DCDでは、これらが全体的に苦手な場合もあれば、一部のみが苦手で、他は問題ない場合もあります。Gさんは粗大運動が苦手なタイプ、Hくんは微細運動が苦手なタイプの例です。
チック症 突発的、反復的な動きや発声など
チック症は、突発的、反復的に、同じ体の動きや発声が見られることが特徴です。体の動きを主症状とするものを「運動チック」、発声を主症状とするものを「音声チック」、両者とも存在する状態が長期間続くものを「トゥレット症」と言います。
また、運動チックと音声チックは、動きや発声が単純な「単純チック」と、ややゆっくりで目的がある行動のように見える「複雑チック」に分けられます。単純運動チックでは「まばたきをする」「首を振る」など、複雑運動チックでは「顔の表情を変える」「人や物に触る」など、単純音声チックでは「声を出す」「 咳 払いする」「鼻を鳴らす」など、複雑音声チックでは「状況に合わない言葉や好ましくない言葉を言う」などが挙げられます。
全く自分で制御できないわけではなく、一時的であれば、自分で症状を抑えることができます。
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先天的な発達の問題はさておいて、特定動作をめぐる、本人と集団の認知と評価の問題に、個々人の感情の推移が混じると扱いが難しいですね。 学生にサッカ...
先天的な発達の問題はさておいて、特定動作をめぐる、本人と集団の認知と評価の問題に、個々人の感情の推移が混じると扱いが難しいですね。
学生にサッカーを教えていても、それまでの価値観や獲得してきた動作、それも、サッカー特有の動作以前の立つ姿勢、走る姿勢、言語能力や戦術理解力によって、教え方の使い分けが難しいです。
(例えば最近は男子でも内股の選手が増えています。特定動作に特化した弊害です。 また、ほめ上手すぎる指導者の影響が修正点の認知や改善の障壁になります。)
なんとなく、ある程度の速度で走ったりターンができていれば、普通は気にも留めませんが、よく見ると、関節や筋肉の協調運動には個体差があり、ある程度パターン分けすることができます。
ここから本文に繋がりますが、おそらく、日本や韓国、中国以外ではお箸を上手に使えなくても不器用とは言われないでしょう。
一方で、日本人でも、ご飯や魚の食べ方の器用な人と汚い人がいます。
しかし、食べれていれば、問題にならない。
その中で、伝えると伝わるの違い、分かるとできるの違いがあって、発達の順番や成長速度とセットで扱いが難しいのだと思います。
ましてや早生まれだと1歳くらい若いわけですし、筋肉も脳もより未熟です。
その中で、同じ集団にいることで、コンプレックスが生じて、社会的な問題から個人的な問題になると大変ですね。
扱う教師や保護者の能力にも大きく依存します。
成長途上にミスはつきものですし、やり方に個体差もあります。
そのしりぬぐいを誰がするのかの問題やさじ加減はありますが、ミスを指摘するほどにミスするイメージが脳に刷り込まれたり、一部の精神症状やチック症というストレスの代償行為が発生することを考えるべきです。
一方で、子供のうちから、なんとなく、そういう言葉や評価の複雑な意味合いを伝えていくことも大事なのではないかと思います。
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