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夫と腎臓とわたし~夫婦間腎移植を選んだ二人の物語 もろずみ・はるか

医療・健康・介護のコラム

誰がドナーになる?…「腎臓あげるけんね」夫のほかに名乗り出てくれたのは

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ショック!妊娠すると、妻は“夫アレルギー”になるの?

 夫の腎臓を移植した後、「旦那さんと適合したの? 奇跡だね」と言われることが多い。

 実は、奇跡ではないのです。医学の進歩により、現在は非血縁者、血液型不適合者でも、95%は移植手術を行うことができるのだ。ただし、問題が一つあった。

 現在も私の主治医を務めてくださっている東京女子医科大学病院教授・石田英樹先生が、「レシピエント(腎臓をもらう患者)に妊娠歴がある場合は、注意が必要です。抗HLA抗体ができている可能性があるためです」と解説してくれた。

 どういうことか。例えば、 麻疹(はしか) にかかると、体内に麻疹の抗体ができて、以後は麻疹をブロックしてくれる。それと考え方は同じで、夫の子供を妊娠すると、体内に“夫の抗体”ができる。それ以降、夫の一部である腎臓を移植しようものなら、腎臓を“異物”とみなして排除しようとしてくるという。悲しいことに、“夫アレルギー”になってしまうのだ。

 私には、妊娠歴がある。ということは、移植をしても、すぐに夫の腎臓がダメになってしまうということだろうか。ゾッと背筋を凍らせていると、「大丈夫、手立てはあります」と石田先生に励まされた。

 「レシピエントの抗HLA抗体の量を測定し、その量が多いレシピエントには移植前に種々の治療を行い、抗HLA抗体を低下させてから移植に臨みます」

 私の場合、抗HLA抗体の量がすごく多いというわけではなかったが、通常の免疫抑制の他に、抗体を作る細胞を抑制する薬を投与してもらっている。今こうして、夫とエクササイズして汗を流していられるのは、薬により、抗HLA抗体がしっかり抑制されている証拠なのだ。

健やかなるときも病めるときも“運命共同体”

 「ドナー選び」に苦心する患者さんは少なくないように思う。一度手術したら「やっぱりやめた」は許されない。もらった腎臓を返却することはできないし、移植後、ドナーとレシピエントは特別な関係になる。

 夫の「もし義父や義姉にお願いしていたら、きっと後悔していたと思う」という言葉の根底には、ドナーとレシピエントが“運命共同体”になったんだという実感が込められている。

 「僕は、夫婦で長生きしてしあわせになるためにドナーになった。定年退職後は、夫婦で温泉に出かけたり、ゆっくり余生を楽しみたい。これは僕らの夢なんだから、夫婦で病を克服できてよかった」

 医師たちのたゆまぬ努力で、夫婦間腎移植は増え続けている。日本移植学会によると、17年の腎移植件数は1742例。うち9割に近い1544例が生体腎移植で、夫婦間腎移植は566例の実績がある。(もろずみはるか 医療コラムニスト)

監修 東京女子医科大学病院・石田英樹教授

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もろずみ・はるか

医療コラムニスト
 1980年、福岡県生まれ。広告制作会社を経て2010年に独立。ブックライターとしても活動し、編集協力した書籍に『成約率98%の秘訣』(かんき出版)、『バカ力』(ポプラ社)など。中学1年生の時に慢性腎臓病を発症。18年3月、夫の腎臓を移植する手術を受けた。

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1件 のコメント

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ブラックジャックによろしく を再び読んで

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

たまたま、目にしました。 この15-20年で、改善した部分もあれば、先送りにされた問題も多い医療界。 腎移植もテーマになっています。 文明は急速...

たまたま、目にしました。
この15-20年で、改善した部分もあれば、先送りにされた問題も多い医療界。
腎移植もテーマになっています。

文明は急速に進化しても、人間の理解や社会のシステムは中々動かない問題もあります。
簡単に動いてはいけない問題もあります。

モノの消費と浪費の区別が困難なのと、人間の命の意味や価値の多様性の判読が困難なのは似ています。
ある価値観が動くことが、理解を重ねた個人や小グループには良くても、そうでないグループには違う影響を与えることもあります。

肉親の絆もその一つの行為で、全体のバランスが壊れることもあります。
精神科や心療内科の共依存という言葉を考えれば、人間社会の複雑性は理解できます。
2-5人程度のユニットでさえ、変化は様々な変化を副次的に強いるわけで、バタフライ効果を思えば、様々なことが様々に複雑です。

本文に対する答えにならない答えみたいなものでもあります。
一方で、腎移植や透析という生存手段に関して、我々は理解を深める必要があるのは確かです。

いま、放射線科医というマイナーな分野が漫画やドラマになりました。
過去を見ても、人気の無い科や切羽詰まっている科を持ち上げる創作が多いような気もします。
社会の意向もあるでしょう。
一方で、専門科に丸投げすることは、人間としても、患者としても、双方に不利益が生じることが多いです。

学ばなければならないことが多い時代に辟易しますが、学び続けられるインフラや社会状況も含めて衆知を集めていく必要があります。

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