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いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

医療・健康・介護のコラム

体外受精の費用がさらに高騰 43%が「1回50万円以上」と回答

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費用がネックで不妊治療をやめたり、躊躇したりすることも

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 先日、仕事関係の集まりに出席したところ、その懇親会で「うち、なかなか2人目の妊活がうまくいかなくて」という話が始まりました。私が理事長を務めるNPO法人Fineの活動とは関係のない場だったので、「えっ、ここでも妊活話?」と内心少し驚きながらみんなで話を聞いていたところ、「病院に行ってみたら、検査費用が夫婦それぞれ6万円ぐらいかかるといわれて、ひいちゃって。話だけ聞いて帰ってきちゃいましたよ」とおっしゃる。その言葉に私はさらに驚き、「え、ちょっと待ってください。検査だけで? うーん、そんなにかかるわけは……。聞き間違いとか……」と口から出かかったのですが、話はすでに別のことに移り、その場はうやむやに。何とな~く納得いかないまま、帰ってきました。

 結局、事の真偽は定かにはならなかったのですが、こんなふうにお金の問題で不妊治療を中断する、あるいは始めるのを 躊躇(ちゅうちょ) する方の話を近頃よく耳にします。

 半年前に不妊治療を始めたというSさんは、結婚1年目の35歳。まだ新婚のうちに早めの妊活を始めたそうです。そんなに急がなくても……と思ったのですが、話を聞けば彼女はバツイチとのこと。「今の夫は7歳年下で、大の子ども好きなんです。早く赤ちゃんの顔を見せてあげたくて」。自分が年上ということもあり、もしのんびりしていて子どもができなかったらと思うと気持ちが焦ってしまって、病院通いを始めたといいます。「でも、人工授精をしてみませんかと言われ、それは保険が利かないと聞いてちょっと迷ってしまって……」と、今は通院を中断しているそうです。

 このコラムでも以前に取り上げたように、高額な費用は不妊治療の大きな課題です。そのような中、不妊当事者へのFineのアンケート結果がまとまり、不妊治療費がさらに高額化していることがわかりました。その中からいくつかご紹介します。

保険が利かない人工授精や体外受精、顕微授精

 その前に、不妊治療について簡単にご説明します。不妊治療には大きく4段階があり、第1段階が「タイミング法」といわれる、排卵日を指定して夫婦生活を指導されるものです。第2段階が「人工授精」といって、精子を採取し、女性の子宮に戻すものです。第3段階が「体外受精」。これは精子と卵子を手術で取り出し、体外で精子と合わせて受精させ、受精卵を子宮に戻すもの。第4段階が「顕微授精」で、これは体外受精のオプションのようなものですが、体外受精の際に取り出した卵子一つに、1匹の精子を選んで卵子に注入し、受精をさせて、その受精卵を子宮に戻すものです。

 第2段階以降は保険が利かないため、すべて自費診療となります。Fineでは2010年、13年、そして18年に経済的負担に関するアンケートを実施しており、その3回の治療費の推移をまとめたのが次のグラフです。

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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