心のアンチエイジング~米寿になって思うこと 塩谷信幸
医療・健康・介護のコラム
アンチエイジングは虚栄心を満たす?
僕はアンチエイジング医療などを専門にしてきた形成外科医です。1955年に大学を卒業して、アメリカで8年間修業をしました。形成外科というのは、事故での負傷や病気で外見に生じた問題を治療で再建するという外科の一分野で、帰国した日本の医学界では、まだ草創期でした。外見の治療という特性から、一歩進んでまぶたを二重にしたり、鼻の形を変えたり、シワやたるみを取る美容外科もこの分野から派生してきました。いわゆる「美容整形」。僕もシワ取り手術をしていましたが、当時は、社会的にも医師の間でも今以上にいかがわしいイメージで見られたものでした。
ここ20年ほどの間にアンチエイジング(抗加齢)という言葉が定着して、加齢に伴う変化を抑えていくという考え方の中で、シワやたるみ、肌のくすみを取る、レーザー治療やケミカルピールといった治療が市民権を得てきたように思えます。今やアンチエイジングは大はやりで、「アンチエイジングダイエット」「アンチエイジングクリーム」などいろいろな健康活動や商品にアンチエイジングの冠がつけられています。
僕は、大学を定年退職した65歳の時にメスを置いてからは、美容医療やアンチエイジング医療の正しい情報を普及させる活動や企業のコンサルタントの仕事を続けています。
アンチエイジングは出会いのため!

その活動のひとつが「アンチエイジング塩谷塾」という年8回のセミナーです。毎回、皮膚科や美容外科などの専門医らを招いて、アンチエイジング医療の最新情報などハウツーを提供するだけではなく、もう一歩進めて、自分が求めているものの理解を深めるために「なぜ、若く見られたいのか?」といったテーマで受講生と討論の時間を設けています。受講生は9割が女性、外見の変化が気になる40、50歳代の方が8割です。討論では率直な声が出てきます。「現役の女として見られたいというアピール」「よい出会いのために魅力的でありたい」「改めて考えると虚栄心かなぁ」……。
見た目の変化で心が変わる
毎回みなさんの話を聞いていると、第一の関心はもちろん見た目なのですが、見た目への満足は自信につながり、前向きに人と積極的にかかわっていくようになれるようです。前向きな心が、新しい人生の可能性を開き、すると一層活気が出てくるというわけです。外見は心のあり方を変えてくれる――。受講生の話から強く感じることです。
一方、僕自身はと言うと、今年88歳。大学の同級生の半数以上は鬼籍に入り、時々訃報が届きます。身体はポンコツです。日中のトイレは1時間おき。薬を飲んで寝ても夜間に2度は目覚めます。海外に行くと時差ボケに苦労します。そして80歳を過ぎてから、靴下を履いたり、洋服を着たり、髪をとかしたり、身づくろいなど日常の作業がいささかおっくうになりました。体にも心にも変化を感じています。でも、平日の仕事や学会に出かけることは苦になりません。自分の中で老いた部分と昔から変わらない部分が共存しています。そして人とのかかわりが心の張りになり、可能な限りこうした活動を続けていきたいと思っています。
アンチエイジングは幸せの医療
アンチエイジング医学には、見た目だけではなく、身体の機能を若く健康に保つ医療も含まれています。僕の子ども世代の女性たちの外見を良くしたいという願い、僕たち世代は機能の維持に関心があります。関心は異なるようでいて、目的とするところは共通しているようにも思います。人と、社会とかかわっていく気持ちや身体を維持することで、幸せを追求している……と言えないでしょうか。
アンチエイジング医療は、満足のいく見た目や健康長寿の実現を目指す医療ですが、それは同時に、幸せを求める心の医療でもあると考えるようになりました。米寿を迎えた自分の心にも問いかけながら、アンチエイジング医療について僕の考えをお話ししていきたいと思います。
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自分は40前後に過ぎませんが、もともとスポーツ以外は若者らしさもあまりなかったので、怪我による変化、スポーツを嗜む周囲の人間の年代から老いを感じ...
自分は40前後に過ぎませんが、もともとスポーツ以外は若者らしさもあまりなかったので、怪我による変化、スポーツを嗜む周囲の人間の年代から老いを感じます。
ふと気づく老化・・・一方で、健診に行けば、60代にしか見えない80歳もいれば、50前に70歳を超えたように見える人もいます。
この違いは何なのか?
私生活や仕事の違い、取り組み方の違い、感じ方の違い、複雑に絡み合っています。
年齢相応の生活もある一方で、年柄にもない生き方や考え方が生む活力もあります。
虚栄心に見えるものが虚なのか、実なのか、実は本人も周囲もよく理解できている場合は少ないものですし、その真偽よりも、日々楽しくいられる方が大事なのではないかと思います。
自分にとっては、20-30代の選手に負けないプレー中の存在感を作り出すのは虚栄心でもあり現在の生き甲斐でもあります。(ついでに、自分の技術を教えてあげる)
価値の流動性は貨幣価値と一緒ではないかと思います。
10000円はどういうお金ですか?
東京で生活するには一か月の住居費にもなりません。
節約上手なら1週間は楽しく生活できるでしょう。
商才がある人なら3倍に増やせるかもしれません。
真面目な人は数十冊の本を読みこむ方法を考えるかもしれません。
色んな見方や扱い方があります。
外見も内面も複雑に絡み合っています。
昔みたいに感染症や脱水で簡単に死ぬ時代でもないので、自分にとって気持ちのいいアンチエイジングやライフスタイル、心の持ち方を学んでいくことが大事なのではないかと思います。
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