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石飛幸三の『人生の最期をどう迎えるか』

コラム

富国強兵時代にできた刑法 超高齢社会に合わない延命至上主義

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命を延ばす方法があるならとにかくやる、しなければ罰する?

 明治時代、結核で亡くなる若者は珍しくありませんでした。国としては、強い軍隊を作るには、若者を病気で死なせてはいけない、医者に頑張ってもらって、家族にも医療に頼ってもらわなければいけない……。日本の刑法は、そんな時代を背景に作られ、今もそのままです。ですから、218条、219条で、もし命を延ばす方法があるなら、とにかく行わなければならない、それをしないで死なせたら保護責任者遺棄致死罪で罰する、としているのです。

 しかし、今や時代が全く変わりしました。超高齢社会では、多くの者が老いて人生の最終章にまでたどり着きます。どのように最期を迎えるか、それぞれが考えなければならなくなりました。

医療の押し付けを嫌がり、「自裁死」選んだ西部邁さん

 評論家の西部 (すすむ) さんは昨年、多摩川で入水自殺されました。著書で言っておられます。日本で「自然死」と呼ばれているもののほとんどは実は偽装で、実態は「病院死」だと。事実、日本人の8割が病院などで死ぬようになりました。西部さんは「最期を他人に命令されたり、 (いじ) り回されたりしたくない」として、「 自裁死(じさいし) 」を選択する可能性を示唆していました。

 老いて衰えて、いずれ最期を迎えるのが我々の一生だ。それを、どこまでも死んではいけない、頑張れ、頑張れと病院に入院させられて、管だらけにされて、医療を押し付けられて生かされなければならないなんて、何を考えているのか、自分はそんな目には遭いたくない……。そうした自分の固い意思を、以前から周囲に示していました。

 数年前、大阪大学歯学部元助教の認知症のお母さんが夜に暴れ、自傷しないようにご家族で保護しましたが、翌日、亡くなりました。元助教は傷害致死罪で起訴され、長期間、勾留されました。控訴審で傷害致死罪は否定されましたが、暴行罪による罰金刑は確定し、大学に復帰できていません。認知症の人が暴れることは珍しいことではなく、その母親を保護しようとした結果、故意に押さえつけて暴行したとして有罪になってしまったのです。

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石飛幸三(いしとび・こうぞう)
 1935年、広島県生まれ。慶応大学医学部卒。ドイツのフェルディナント・ザウアーブルッフ記念病院、東京都済生会中央病院で血管外科医として勤務。プロ野球投手の手術も多く手がけた。2005年12月より、世田谷区立特別養護老人ホーム・芦花ホーム常勤医。10年に「平穏死」を提唱し、反響を呼ぶ。著書に「『平穏死』のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか」(講談社)、「『平穏死』という選択」(幻冬舎ルネッサンス新書)、「『平穏死』を受け入れるレッスン」(誠文堂新光社)、「穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語」(さくら舎)など。

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1件 のコメント

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政治経済絡みの幸福と医療の宗教性と多様性

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

社会情勢や人口動態、社会常識、医療レベル、経済レベルが変わってきているのに、法律のくくりが古い、運用の幅が狭いというのは不幸な事ですよね。 一方...

社会情勢や人口動態、社会常識、医療レベル、経済レベルが変わってきているのに、法律のくくりが古い、運用の幅が狭いというのは不幸な事ですよね。

一方で、その不幸の構造的問題の解決よりも、日々の問題の解決や逃避行動の方が多くの個人の幸福に合目的的な難しさがあります。
様々な人の利害が絡むとはそういう事です。

小選挙区制の結果、国家ではなく市町村の利益ばかり問われるようになったと、どこかの評論家の意見を読みましたが、同じような部分はあると思います。
民と国家とどちらが主で従かは個々人の意見や所属組織にもよりますが、バランス感覚は大事です。

同じように、社会的枠組みや法律を見直すことによって、不幸や不利益を得る人の存在も理解したうえで、一つ一つやっていくしかないのではないかと思います。

抗癌剤医療なんかも類似の問題ですよね。
癌と戦う、という選択肢に固執し過ぎていないか?

逆に言えば、そういう自由度の高い選択肢を持てる幸福感の多様性の時代なのかもしれません。

そういう価値観をいつまでも持てない事と学んでいくことのどちらが幸福なのかはわかりませんが、経済的豊かさだけで人々は幸せでいられないことに2000年前後あたりに多くの日本人は気付いてしまいました。
戦前戦後から世代がいくつか変わった影響もあるでしょう。

経済力はある種のみじめさから守ってくれますが、一方で、人間関係も含めて、運用の仕方が問われます。
そういうものを学ぶことを放棄したり、先送りすることの意味も問われるわけですけどね。

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