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がん患者団体のリレー活動報告

医療・健康・介護のコラム

NPO法人 肺がん患者の会 ワンステップ

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 肺がんは患者数の多いいわゆる「5大がん」の一つですが、なかでも予後が厳しいとされています。2016年発表のがん種別10年生存率は、全がん種平均の58.2%に対し、肺がんは33.2%でした。しかし近年は、ゲノム医学や免疫療法の急速な進歩により、治療成績は大幅に向上しています。

NPO法人 肺がん患者の会 ワンステップ

がんについての正しい知識を学ぶセミナーで発言する長谷川一男理事長(中央)

ワンステップが大切にしていること

 そうしたがんと向き合うには、患者も自分の病気について正確な知識をもつことが大切。そう考えるワンステップは情報発信に力を入れています。ブログでは、診断後間もない人向けの基礎知識から、臨床試験や新薬承認についての最新情報までを幅広く提供。動画コンテンツも多用し、患者目線での解説を目指しています。

 また毎年発行の「肺がんBOOK」は、肺がんと向き合いつつ活躍する人のインタビュー記事、患者を対象としたアンケートの結果、全国の患者会紹介などを掲載した情報誌です。イベント参加者に配布するほか、全国のがん診療連携拠点病院にも設置されています。ワンステップはこれらを通じて、メンバーの「知って考える」を手助けすることを活動の柱としています。

 ワンステップが大切にしていることのもう一つは、「仲間を増やす」こと。2か月ごとにおしゃべり会を開き、メンバーが直接会って親睦を深める機会を作っています。ここで、最近開かれたおしゃべり会の様子をリポートしましょう。

ある日のおしゃべり会

 2019年3月の、とある土曜の昼下がり。60人参加。今回のスピーカーは、メンバーの一人で、患者家族であり、社会保険労務士でもあるOさんでした。テーマは障害年金。年金制度のいろはから、障害年金とは何か、がん患者が支給を受けるまでのノウハウが解説されました。その後、質問が多く出て、この問題が参加者にとって大きな関心の的であることがうかがえました。

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がんについて学ぶセミナーで熱心に聞き入る参加者たち

 続いて、事前に寄せられた疑問・質問にみんなで答えるコーナー。日常生活での注意点や代替療法、家族関係、はては余命をどう考えるかについてまで、参加者が自分の経験や考えを語りました。発言した人もそうでなかった人も、それぞれが考えを深めるきっかけになったと思います。

 最後はグループに分かれての「おしゃべり」。参加者は、遺伝子変異別のグループや「術後」グループ、家族グループなどから参加したいグループを選び、おしゃべりの輪に加わります。この日の「おしゃべり」は約1時間の予定でしたが、それを過ぎても熱心に話し込む参加者たちの姿が会場のあちこちで見られました。

 ワンステップの設立直後に始まったおしゃべり会に、開始当初から参加するAさん(30代女性)。この日も姿を見せたAさんに、参加を続ける理由をたずねてみました。「肺がん仲間に会って、みんなが元気にしているのが分かる。そして自分が元気にしていることで、ほかの人にも元気をあげられるのかなあと思うんです」。肺がん仲間が直接会うことでしか得られないものがある――若くして肺がんと向き合うAさんですが、おしゃべり会に参加することの意義を明るい表情で語ってくれました。

NPO法人 肺がん患者の会 ワンステップ

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 2015年4月に設立され、1年後にNPO法人化。メンバー数は19年3月現在で、約1250人。肺がん患者の「知って考える」や「仲間を作ろう」をサポートすることに加え、アドボカシー活動(権利擁護や支援、代弁の活動)にも積極的に取り組む。
 設立者の長谷川一男理事長=写真=は、高額薬剤問題や受動喫煙対策問題などがメディアで話題になるたび、肺がん患者を代表して発言を続けてきた。全国の肺がん患者会の連合組織である日本肺がん患者連絡会の理事長も務め、18年夏、国会で受動喫煙対策が盛り込まれた健康増進法改正案が審議された際には、参考人として発言の機会を得た。
 ホームページ  http://www.lung-onestep.jp/
 ブログ     http://ameblo.jp/hbksakuemon/

 このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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公益財団法人 正力厚生会

 正力厚生会は1943年(昭和18)に設立され、2009年に公益財団法人となりました。「がん医療フォーラム」の開催など、2006年度からは「がん患者とその家族への支援」に重点を置いた事業を続けています。
 現在は、医療機関への助成と、いずれも公募によるがん患者団体への助成(最大50万円)、読売日本交響楽団弦楽四重奏の病院コンサート(ハートフルコンサート)を、事業の3本柱としています。
 これからも、より質の高いがん患者支援事業を目指していきます。
 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル29階
 (電話)03・3216・7122   (ファクス)03・3216・8676
  https://shourikikouseikai.or.jp/

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