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リングドクター・富家孝の「死を想え」

医療・健康・介護のコラム

人工透析中止患者の死が問いかける「尊厳死」

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 東京都福生市の公立福生病院で、人工透析治療の中止を希望した女性患者(44)が1週間後に死亡したことが、大きな問題になっています。この患者さんは、透析を止めることに同意し、同意書もあるのですが、死の前日、苦痛から透析の再開を訴えていたと言います。

 こうしたことから、病院側の同意を求めるプロセスに不手際があったのではないかと指摘する報道がありました。また、この病院では2013年4月からの4年間に受診した149人のうち、終末期ではない約20人の患者が透析を選択していないこと。さらに、透析を選択せずに死亡した患者が複数いるということも一部で問題視されています。病院側は「悪意や手抜きや医療過誤があった事実もない」と否定しています。

医師の使命は患者を救うことだが……

 私は報道された以上は知りません。学会や都による調査も続いています。しかし、報道の一部に人工透析や人の死に対する認識不足があったのではないかと感じます。医師はなにがあろうと、患者を助けなければならないという考えに影響されていると思います。

 もちろん、医師の使命は最善を尽くして患者を救うことです。しかし、どんなに治療しても治癒が難しいことはあるのです。その一つが、腎機能の低下、いわゆる「腎不全」です。腎不全には急性と慢性がありますが、慢性になると、もう機能が回復する見込みはなくなります。

 放っておけば死に至るため、人工透析や腎臓移植を行います。これ以外に、死を免れる方法はありません。人工透析がなかった時代は、腎臓を悪くして死ぬのは「老衰」=「自然死」とされていました。

国民378人に1人が透析患者、増え続ける理由

 腎臓の機能は、年を取るにつれて徐々にですが低下していきます。これに生活習慣病である高血圧や糖尿病などが加わると、さらに低下します。現在、透析を受けている患者さんの約4割が「糖尿病性腎症」です。人工透析患者は年々増え続けており、17年末には全国で33万4505人に上っています。人口100万人あたり2640人で、人口比では台湾についで世界で2番目に多く、国民の378.8人に1人が透析患者という透析大国です。

 なぜ、日本ではこれほど多くの方が透析をしているのかと言うと、まず医療保険などによる負担軽減が受けられること。一般的に透析には月40万円ほどの費用がかかりますが、患者負担は1万〜2万円で済みます。1人あたり年間500万円近くを公費で負担してくれます。これが病院や製薬会社など医療側にも多くの収入をもたらします。

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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3件 のコメント

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尊厳死を認める!

カモちゃん

高齢者の1人です。身体が元気な間は働かなければと人手不足の介護業務で20年になります。仕事で高齢者と接しているとつくづく長生きするのは本人も家族...

高齢者の1人です。身体が元気な間は働かなければと人手不足の介護業務で20年になります。仕事で高齢者と接しているとつくづく長生きするのは本人も家族も果ては医療、介護保険にまで負担をかけ罪な事だと感じます。
認知症で何も理解できないなら周りが哀れと思っても本人は何も感じません。
まだ理解して働いていられる間に尊厳死を
法で認める方向にして頂きたい!切なる願いです。

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透析ばかりではない

平成の終わりに

どうして人工透析だけがクローズアップされるのか理解できません。 私は両親を介護の上看取りましたが、最期に近づくにつれ身体のそこかしこの機能が落ち...

どうして人工透析だけがクローズアップされるのか理解できません。
私は両親を介護の上看取りましたが、最期に近づくにつれ身体のそこかしこの機能が落ちてくる、そのたびに医師から治療を受けるかどうかの判断を求められました。具体的には人工透析、栄養チューブ、人工呼吸、それぞれ命に直結するものではありますが、延命治療は一切無用との本人の意思を確認していましたのでそれらすべてを辞退し成り行きに任せました。
このように医師と患者の命のやり取りは人工透析以外にも医療現場では絶えず発生しているはずです。もちろん専門知識のある医師の判断に委ねる部分は多いとは思いますが、全て医師任せという訳にはいきません。今回の問題は患者側にどのように生き死にたいかという覚悟を求めているのではないでしょうか。

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「私」と社会の繋がりを考えた尊厳死の形

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

本文では軽く触れられていますが、保険診療上の優遇の問題と、透析患者の他の疾患の問題がとても複雑なのではないかと思います。 以前、有名なキャスター...

本文では軽く触れられていますが、保険診療上の優遇の問題と、透析患者の他の疾患の問題がとても複雑なのではないかと思います。
以前、有名なキャスターが「透析患者を殺せばいい」という論旨を発言し、大問題になりましたが、人や社会の繋がりを理解できていないのだと思います。
というか、医師も含めて一般人では知らない方の方が多いでしょう。

「私」が人工透析を選ばないということは、他人がそのように判断することとイコールではない。
人工透析の中止に伴う心不全などの症状が凄く苦しいことが実感も含めて伝わっているとは限らない。
人工透析は普段は糖尿病、腎臓病、などの患者の為だけのものだが、クラッシュ症候群や感染性の腎炎などの一過性の急性腎障害からレスキューする共通のインフラで、災害対策でもある。
どこまで許されていいのかは不詳だが、そういう透析にまつわる医療費が社会経済の安定や雇用の吸着をもたらしている。

何よりも、本人も家族も、そんな積極的安楽死みたいなものを望めるキモの座った人ばかりでもないですよね。

僕自身は透析の仕事も長年従事していることもあり、透析患者はスクリーニングでCTやMRI検査なんかもやる高齢者が多くて、それが日本の画像診断レベルの向上に寄与する側面もあるので、一般市民にも悪くないと思います。
透析患者の様々な虚血性変化に慣れると、一般の患者に多い病態の理解は容易です。

生きることは死ぬことでもありますが、「私」の為だけに社会は動きません。
一方で、「私」=一人一人の判断が社会にとってどのような意味や結果を持つのか、個人も社会も考えていく必要があるでしょう。
透析のみならず、社会が支えてくれる尊厳死の形と多様性を維持するために。

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