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なが~く、楽しくお酒と付き合うために

コラム

飲みたいのはお酒なのか、アルコールなのか?

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飲みたいのはお酒なのか、アルコールなのか?

 皆さん、はじめまして。精神科医の重盛憲司と申します。このたび、縁あってコラムを連載させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今回は「人はお酒を飲みたいのか、エチルアルコールを摂取したいのか」というテーマで書きたいと思います。

 私は以前、アルコール依存症の専門病院である、国立療養所久里浜病院(現・国立病院機構久里浜医療センター)に勤務していました。アルコール依存症の治療は、抗酒剤(服用するとアルコールを摂取した際、ひどい二日酔いのような状態になります)などを用いた薬物療法と、同じ依存症の患者さん同士で体験を話し合う、グループミーティングなどを併用して進めていきます。

朝酒をおいしく感じる理由とは?

 その日のミーティングのテーマは、「いつ飲むお酒が一番おいしいか?」でした。アルコール依存症の治療なのに、そんなテーマで話し合って大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、自分の飲酒行動を振り返ることも大切なのです。

 私はミーティングの際、自分もテーマに沿ったコメントをするよう心がけていますので、「スポーツのあとのビールが、最高においしい。それと、学会発表の資料作りなど、根を詰めた仕事のあとは、ウイスキーをロックで飲むのが一番だ」と言いました。

 すると、それを聞いた患者のAさんが、得意そうに言いました。

 「先生は、本当のお酒のおいしさを知らない。なんといっても、朝飲む酒が一番ですよ」

 それを聞いて、私はすぐにピンときました。

 「Aさん、それはね、寝ている間に体内のアルコールが分解されて、血中アルコール濃度が下がっているときにアルコールを摂取するからおいしく感じるのであって、お酒の味とかは関係ないでしょう」

 私は諭すように言いましたが、Aさんはポカンとしていました。おそらくAさんは、入院前、起きている間はひっきりなしにお酒を飲む、いわゆる連続飲酒の状態だったのでしょう。アルコールを摂取した状態に 身体(からだ) が慣れてしまうと、アルコールが抜けたときに不快感を伴い、ひどいときには手の震えや幻聴などの禁断症状が起きることもあります。

 こうした不快感や禁断症状を避けるために、効率よくアルコールを摂取して、常に酔っている状態を維持することがお酒を飲む目的となってしまえば、お酒の味は二の次で、アルコール濃度の高さや、手に入りやすさがお酒選びの基準になります。

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shigemori_prof

重盛憲司(しげもり・けんじ)

心療内科・精神科医 1952年、長野県生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室を経て、国立療養所久里浜病院(現・国立病院機構久里浜医療センター)にてアルコール依存症などの治療に携わる。また、厚生省(当時)でアルコール関連問題対策を担当。一方、自身では長年にわたり様々なお酒を愛飲。クラフトビールやシングルモルトウイスキーが近年のマイブーム。趣味は学生時代から続けるアイスホッケーと、自宅近くのマリーナからヨットで海に出ること。現在は洗足メンタルクリニック院長。テレビ番組の出演多数。

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3件 のコメント

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ありがとうございます

ゴマ吉

はじめまして。 前日、友人と飲んだ後、ブラックアウトしたビール好きのおっさんです。 その時の妻との会話を忘れ、ショックを受けた為、ここにたどり着...

はじめまして。
前日、友人と飲んだ後、ブラックアウトしたビール好きのおっさんです。
その時の妻との会話を忘れ、ショックを受けた為、ここにたどり着きました。
ビールを買うとき、アルコール度数の高いものを選んでいた私。
アルコール依存症かもしれません。
先生の記事をいくらか読ませてもらって、お酒を控えようと思いました。
ありがとうございました。

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物質依存と行為依存と寂しさの狭間で

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

酒が好きなのか、アルコール依存なのか、線引きは不確かですね。 僕も酒量は増える一方ですが、サッカーの調整の時は割とあっさり減ります。 結局、他に...

酒が好きなのか、アルコール依存なのか、線引きは不確かですね。
僕も酒量は増える一方ですが、サッカーの調整の時は割とあっさり減ります。
結局、他に依存するものがあれば、ある程度は代償可能なのでしょう。

誰も一人では生きられません。
孤独というのは、他者や種々の社会との心の感じ方の距離感や時間を切り取った問題であって、大きな空間の時系列ではまずありえません。

とはいえ、何らかの物理的刺激や心理的刺激、あるいはその拒絶が、その人の心、あるいは体の中での物質の動きに影響を与えるのでしょう。

個人的には、アルコールをやめさせるよりも、他にもっと楽しいことを見つけさせるアプローチも大事なのではないかと思います。

ロシアでは極寒の地で室内でお酒を飲むしかないことがアルコール依存症を高めていると言います。
なら、断酒薬や酒税よりも、効果的なアプローチは日本に幾つかありそうな気もします。

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期待しています

マダムふっと

51歳で亡くなった父はいつも酒臭く朝は機嫌が悪い人でした。それはアルコールが分解されて血中濃度が下がりお酒というよりアルコールを欲している状態だ...

51歳で亡くなった父はいつも酒臭く朝は機嫌が悪い人でした。それはアルコールが分解されて血中濃度が下がりお酒というよりアルコールを欲している状態だったんですね。仕事がありさすがに朝から飲むわけにもいかず不機嫌だった、なるほどと納得しました。父のようなお酒との付き合いはもってのほかですが、私もお酒は好きなので父のようにならないためにも連載期待しています。

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