スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす
医療・健康・介護のコラム
腰痛「前かがみで痛い」と「反らして痛い」は原因が違う…けがをしない体作りのために
個人の状態に応じたリハビリやトレーニングを
また、柔軟性、体幹の安定性、バランス、協調性など個人のコンディションが、そのスポーツ動作にどう影響したかも大切です。同じチームで同じ練習をしていても、痛みや故障が生じる選手もいれば、大丈夫な選手もいることからも、スポーツによる故障は、運動量だけではなく、個人のコンディションにも原因があると考えらえれます。つまり、「腰が痛くなった選手には、このリハビリテーションをすれば良くなる」という一つの答えがあるわけではなく、痛みの原因となっている選手それぞれの身体的要因に対して必要なリハビリテーションを行うことが大切です。
そして、個々の選手の状態を評価して、オーダーメードのリハビリメニューを組み立てるプロフェッショナルが、理学療法士やアスレティックトレーナーです(以下はリハビリテーションのメニュー例)。
それでは、Rさんの経過です。担当した理学療法士は、Rさんの骨盤は後ろに傾く傾向があり、 大腿 部の裏側の筋肉は硬いという評価をしました。練習を休んでいる期間に、「ドローイン」と呼ばれる腹筋を強化するメニューや、ハムストリング(太ももの後ろ側の筋肉)のストレッチを行うよう指導したほか、徐々に体幹の強化を行いました。練習をしばらく休んだ間に腰の痛みは改善し、練習再開後も痛みが出ることはなく、また水泳のタイムも段階的に向上していきました。
けがをする前に自己管理
けがをし、リハビリをしたことがきっかけで、自己管理ができるようになる選手がいます。リハビリの先生の指導にうまく誘導されたということもあるでしょう。ですが、もちろん、けがをする前にコンディションを自己管理できるようになることが一番です。イチロー選手は、徹底した自己管理ができていた選手であったと言えます。身体の良い使い方や動作などの知見が普及し、けがの減少と競技力の向上につながるといいですね。(大関信武 整形外科医)
【スポーツ医学検定のご案内】
私たちは、スポーツに関わる人に体やけがについての正しい知識を広めて、スポーツによるけがを減らすために、「スポーツ医学検定」を実施しています。スポーツ選手のみでなく、指導者や保護者の方も受けてみませんか(誰でも受検できます)。
第5回スポーツ医学検定は2019年5月19日に開催します。申し込みは、 ホームページ で受け付けています(4月5日正午まで)。
本文のイラストや写真の一部は、「スポーツ医学検定公式テキスト」(東洋館出版社)より引用しています。
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春の健診シーズンでは内科健診から運動器検診、耳鼻科健診、眼科検診とトライしています。 放射線科は各科の細かい手術などには手が及びませんが、全身の...
春の健診シーズンでは内科健診から運動器検診、耳鼻科健診、眼科検診とトライしています。
放射線科は各科の細かい手術などには手が及びませんが、全身の疾患の知識を学会で復習する機会に恵まれます。
新しい画像診断機器の威力の確認のみならず、様々な分野の復習や人間関係作りのために、整形外科の先生にも是非学会に見学に来ていただきたいと思います。
さて、どんなスポーツでも、スポーツ外の日常があって、そこにまつわる生活パターンや姿勢、動作があります。
そして、スポーツでも、ポジションごとに多いプレーや選手の個性があります。
そういうものの偏りがある中で試合や練習があります。
怪我の一つ一つは偶然が重なることもありますが、その一つ一つの偶然の中には必然の要素が多々あります。
中々難しい部分もありますが、選手のみならず、指導者やご家族もそういう部分に目を向けて変えていってほしいと思います。
同じ背中をそらすという動作でも、日々の姿勢や筋力バランス、関節の堅さにより意味合いは変わります。
これが、科学的エビデンスの怖さで、個体差や性別差、地域差、年齢差を柔軟に考える整形外科医や関連職が増えてほしいと思う所以であります。
僕は関節が堅いので、ストレッチもやりますが、体が硬いなりのプレーも工夫しています。
ストレッチや筋トレも大事ですが、様々なアプローチを選手、指導者、保護者、医療スタッフが知ることで、よりよいスポーツ環境やスポーツを通じた学習、人間形成に繋がっていくと思います。
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SNS双方性社会における常識の塗り替え方
寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受
某巨大組織を塗り替えろ、というSNSの無茶ぶりを酔った勢いで受けました。 もちろん、僕が直接変えるというのは不可能でしょう。 しかし、発想を変え...
某巨大組織を塗り替えろ、というSNSの無茶ぶりを酔った勢いで受けました。
もちろん、僕が直接変えるというのは不可能でしょう。
しかし、発想を変えて、変えられるところから変わってもらうという方策であればうまくいく部分もあるのではないかと思います。
新しい整形外科やリハビリ、スポーツ指導の方策も一緒ですね。
物理的、心理的なインセンティブを想定し、別のインセンティブ領域も設定することです。
それを望まない患者さんや保護者、選手、指導者に強要する必要はありませんが、旧来のやり方でうまくいかない人や楽しめない人から楽しんでもらえるようにしていけばと思います。
部活のBチームCチームの問題もそうですよね。
うまくても、チーム事情や指導者や選手同士の好みに左右されます。
そんな選手たちが輝く機会があれば、一定数の選手、指導者や保護者は賛同し、スポーツは新興されます。
スポーツのプレーや観戦のシェアが増えれば、関連産業も大きくなります。
実際、手法の無理や現代の子供や社会との親和性も含めて、改善の要素は沢山あります。
しかし、押し付けるより、楽しめる方法を考えないと広まりません。
僕みたいな正論系人間なんかうれしくない人も沢山いますからね。
新しい整形外科医も、古い整形外科医や関連職種、古い指導者や地域の文化の間で板挟みと聞きます。
一方で、今は現実的でなくても、将来的にはこうなってほしいビジョンも持たれているようです。
SNSの双方向性社会やAI、ITとの親和性も考慮し、少しずつ新しい価値観や利益誘導を可視化していくのがいいと思います。
既得権益の上の人は過去の実績や構成員を尊重しつつ、新しい世界の構成員にもリスペクトとワッペンを配るだけですから、必要なのは忍耐と距離感です。
多くの古い人が新しい価値観を受け容れるよりも、混乱も少ないでしょう。
そういう意味で部外者も大事です。
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様々な病態の鑑別と様々な予防法とスポーツ
寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受
最新の整形外科医のトレンドは画像診断を押さえつつ、そこに写らないモノ、映りにくいモノを考え、関連職種と手を取りながら、予防やリハビリを行っていく...
最新の整形外科医のトレンドは画像診断を押さえつつ、そこに写らないモノ、映りにくいモノを考え、関連職種と手を取りながら、予防やリハビリを行っていく方にシフトしていますね。
ただ単にシップを貼って収まるか収まらないかというのも一つの基準ですし、最新のコンセプトでも整形外科的に難渋すれば、内科や放射線科あるいは精神科、心療内科の出番ではないかと思います。
思春期後期の大学サッカー部の指導にも難渋しながら楽しんでいます。
結局、他のやりたいことやバイトに勉強も大変な中で、勝ちたい、試合に出たい、良いプレーをしたいという心にどうやって火をつけるか?
これがなかなか難しいです。
特に、センスや先天的なフィジカルに恵まれた人間とその可視化された成功を覆して、もっと自己管理や予防、道具の選び方と言った準備の重要性に目を向けさせることは仏教徒をキリスト教徒に改宗させる並みに難しいことかもしれません。
一方で、そういうことに意識を向けられるくらいレベルアップしてくれました。
自分が追い抜かれるなら自分の教えた相手の方がいいですからね。
いつもOB戦や試合に来てくれた先輩を思い出しての後輩への恩送りだけではなく、自分のエゴでもあります。
本文との関連で言えば、昨今は食育も含めて筋トレに過剰にシフトしています。
子供たちに細かい技術や予備動作、戦略や戦術を身につけさせるより楽ですが、成長には個体差もありますし、プロを作った数、プロで活躍した数、高校の大きな大会で活躍した数にフォーカスすることの危険性は気になります。
サッカーでも、身体が小さいなりに、身体の当て方やその前の体勢の作り方などはさまざまなノウハウがあって、ストレッチや関節周囲筋の強化と並んで非常に大事です。
また、そういう体の仕組みの知識や動作や戦術戦略、用具=準備の重要性に興味を持てばいい職業人になるステップにもなります。
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