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男性の更年期障害…ストレスでホルモン減少

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男性の更年期障害…ストレスでホルモン減少

 やる気が出ない、何となくだるい――。そんな心身の不調に悩まされる中年男性が少なくない。かつては女性特有の悩みとされた更年期障害だが、男性も無縁ではない。(矢沢寛茂)

  50~60代に多く

 更年期障害は、加齢に伴う男性ホルモンの急激な減少によって、発症するとされる。精巣で作られるテストステロンというホルモンで、性機能に関わり、筋肉や骨を強くし、血管をしなやかに保つ働きをする。仕事への意欲、判断力といった脳の機能を高める役割もある。

 男性ホルモンの量は、20歳代をピークにゆるやかに減っていくが、何らかの原因で急激に減少し、様々な症状が出ることがある。これを更年期障害と呼ぶ。

 女性は50歳前後の閉経期をはさんだ10年ほどに多くみられる。男性は50~60歳代に目立ち、40歳代での発症もある。代表的な原因はストレス。強いストレスにさらされると、脳の指令が弱まり、ホルモンを作る力が落ちると考えられる。

 主な症状は〈1〉知的な活動や意欲の低下など「精神的な変化」〈2〉睡眠障害や疲労感、筋力の低下などの「身体的な変化」〈3〉性欲の衰えなど「性的な変化」――の三つ。こうした変化は従来、「年のせい」「気のせい」とされてきたものだ。

 「加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群」という診断名も徐々に広まってきた。日本泌尿器科学会などが2007年、診療の手引を公表して以降、男性の更年期障害の専門外来を置く医療機関も増えている。

 診断に際して、症状を点数化して病気の重さを調べる。「いらいらする」「行動力が落ちた」など、三つの変化を反映させた17の症状について、それぞれ5段階で自己採点する。合計点で「軽度」「中等度」「重度」を評価する。

  うつ病の部分も

 ただ、精神症状の中にはうつ病と重なる部分もあるため、「生きる気力がわかない」など、命に関わる重い症状と判断すれば、精神科の治療を優先して行う。

 血液検査では、男性ホルモン(遊離型テストステロン)の量を測る。50歳の場合、1ミリ・リットル当たり11・8ピコ・グラムが基準で、原則8・5ピコ・グラム未満ならホルモンを補充する。2~3週に1回の筋肉注射を半年~1年ほど続ける。8・5~11・8ピコ・グラム未満で補充することもある。前立腺がんなどがある人は受けられない。

 男性ホルモンの量が基準を満たしていれば、適度な運動や食事で症状の改善を目指す。漢方薬を服用して体調を整える方法もある。

 いつまでも男性らしくありたい。仕事や趣味に前向きでいたい――。こう考える人は、平均寿命が延びる中、今後ますます増えるとみられる。男性ホルモンを生涯にわたって補充することを勧める指針も海外にはある。しかし、生活スタイルの見直しやストレスの軽減を図るなど、無理のない治療や体との付き合い方を考えることが大切だ。

 大阪市立大医学部講師の 鞍作くらつくり 克之さん(泌尿器科・性機能外来担当)は「日本では疲れや気分の落ち込みを理由に受診する人が多いが、海外では性機能の衰えを感じて相談に来る人も多い。気になる症状があれば、泌尿器科や男性更年期障害の専門外来を受診してほしい」と話している。

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