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食べること 生きること~歯医者と地域と食支援 五島朋幸

医療・健康・介護のコラム

口から食べられるようにする食支援とは?

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 人間は様々な理由で口から食べられなくなることがあります。例えば脳卒中やパーキンソン病といった病気でんだり飲み込んだりという食べる機能が低下してしまうことがあります。また、特に高齢者では、誤嚥ごえん性肺炎という病気で入院してしまうと、医師から「口から食べたり飲んだりしてはいけません」と指示されます。誤嚥性肺炎を繰り返したり、食べない期間が長くなったりすると、食べる機能そのものが低下してしまうのです。このような方に対し、口から食べることを取り戻すための支援を「食支援」といいます。

 口から食べるのは、単に栄養を取ることだけが目的ではありません。グルメ雑誌やグルメ番組がこれだけ社会にあふれていることを考えても、食べることは喜びであり楽しみでもあります。また、和食はもちろん、地域ごとに特長的な料理が存在することを考えると、文化でもあります。食を取り戻すことは、これらを取り戻すことでもあるのです。

若いころのように回復しなくても大丈夫

 さて、食支援とは何をすることなのか。食べる機能を回復させればいいだけなのか。ここに大きな問題があります。高齢で口から食べることが難しくなった方が、若い時と同じように口から食べる機能が回復するのでしょうか?

 皆さん、少し想像してみてください。歩けなくなって車椅子で生活をしている高齢者が何らかの訓練をすると、みんな歩けるようになるのか? そんなことはありませんよね。口から食べる機能も一緒です。ある程度まで回復する方はいますが、若い時と同じようにしっかり食べられるかというと、それは難しいのです。

 では、何をするのか。車椅子の方たちは、諦めて何もしないわけではありません。ベッドから車椅子に移る筋力を維持する訓練をしたり、車椅子で移動しやすいように部屋をバリアフリーにしたり。歩く機能が低下した状態でも、その方らしい生活を送れるよう支援していきます。口から食べる支援も同じです。食べる機能が低下した中でも、よりよく生きていただくためにできることはあるのです。

四つの面から食を支援

 食支援は、大きく四つの側面からの支援が考えられます。口から食べる機能、全身状態、生活環境、そして食べる環境。口から食べる機能を回復するために、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士などが機能訓練を行います。その方の状態によって異なりますが、口を大きく開けたり、「パ、タ、カ、ラ」と発音する訓練であったり、口の周囲のマッサージなどをしたりします。

 全身状態が悪く、高熱があったり、意識がもうろうとしたりする状態では食欲もなく、食べることもできません。医者や看護師、薬剤師などが全身状態を安定させるよう努めます。

 生活環境の支援は多岐にわたります。経済的な問題であったり住む場所の問題であったり家庭環境であったり。このような問題に対して、ソーシャルワーカーやケアマネジャー、司法書士などが支援します。

 食べる環境も大変重要です。例えば食べる姿勢。食べる時の姿勢が悪く、椅子から落ちそうになっているようでは、椅子にしがみついているのに必死で食べる機能は低下してしまいます。食べる姿勢を安定させていくのは理学療法士や福祉用具専門相談員たちです。

 また、食べる機能が低下した方に対して、食事そのものを軟らかくしたり飲み込みやすいようにトロミを付けたりします。このような支援を行うのは、栄養士や調理師たちです。この他にも、その方の状況に合わせて、いろんな専門職が食べるための支援を行っているのです。

 食支援には、実に多くの職種が関わっています。僕は歯科医師として一つの側面を支援していますが、他の側面を支援する専門職との連携も必要です。食支援は多職種、他職種連携が重要になってくるのです。(五島朋幸 歯科医師)

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五島朋幸(ごとう・ともゆき)

歯科医師、ふれあい歯科ごとう代表(東京都新宿区)。日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授。新宿食支援研究会代表。ラジオ番組「ドクターごとうの熱血訪問クリニック」、「ドクターごとうの食べるlabo~たべらぼ~」パーソナリティーを務める。 著書は、「訪問歯科ドクターごとう1 歯医者が家にやって来る!?」(大隅書店)、「口腔ケア○と×」(中央法規出版)、「愛は自転車に乗って 歯医者とスルメと情熱と」(大隅書店)など

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