子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
食物アレルギー(6)鶏卵の耐性 成長で得やすく
このシリーズでは、国立病院機構相模原病院臨床研究センター副臨床研究センター長の海老沢元宏さん(58)に聞きます。(聞き手・矢沢寛茂)
鶏卵(卵)のアレルギーは、乳児期から幼少期に最も多く発症する即時型の食物アレルギーです。1歳未満の6割、1歳の4割を占めます。その一方、成長するにつれて耐性を得やすく、6歳頃までに7割が食べられるようになります。
ある男児は生後7か月の時、血液検査で卵アレルギーの反応を示したため、食事から卵を除去しました。その後、カステラを誤って食べ、じんましんになったのをきっかけに、2歳4か月に「経口負荷試験」を受け、どの程度なら摂取可能かを調べることにしました。
たんぱく質の多くは、加熱や加工をすることで性質が変化し、反応が出にくくなることがあります。一方で、反応が出やすいたんぱく質は卵白に多く含まれ、熱に強いものもあります。男児も、卵黄を生で取り出し、つなぎに使った試験には反応しませんでしたが、2歳10か月の時、加熱した全卵8分の1個を食べると、皮膚が赤く大きく腫れてしまいました。
それからは、卵黄をつなぎに使ったハンバーグや揚げ物、卵を含む菓子やパン、練り物などを1~2日おきに食べるようにした結果、3歳半の頃には血液検査の反応は低くなり、かつて症状が出た8分の1個も問題なく食べられるようになりました。今後、2分の1個で試験をする予定で、小学校入学前までに1個分を食べられるようになるのが目標です。
こうした工夫をしながら卵の摂取を続ければ、生活の質も改善し、耐性を得ることが期待できます。ただ、除去する期間が長くなった場合は、味やにおい、見た目に敏感になることがあります。なるべく早くから負荷試験を受け、食べられるものを取ることが重要です。
【略歴】
海老沢元宏(えびさわ・もとひろ)
小児科医、アレルギー専門医。東京慈恵医大卒。最新情報を発信する「食物アレルギー研究会」の世話人代表。
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