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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

コラム

父の認知症を隠したら、新しい彼に「既婚者?」と疑われ…介護と婚活(下)

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「家族のことは話せない」トラウマから挙動不審に

 でも、以前の経験がすっかりトラウマになっていて、やはり両親のことはなかなか言い出せません。言い出すどころか、「バレてはいけない!」と、ヒロさんに車で送ってもらう時には隣の駅で降ろしてもらったり、「家まで車で迎えに行くよ」と言われても「駅前で待ち合わせよう!」と、かたくなにプライベートを隠していました。

 今では笑い話ですが、怪しさ満点の私の挙動にヒロさんの方は、「もしや、既婚者?」「子供がいたりして?」と、いろいろ臆測を巡らせていたようです。

 それでも、ヒロさんの人柄などを知るほどに「この人は大丈夫かもしれない」と思えるようになりました。ある時、「これ、私が書いた本なの」と、両親との生活をつづった『笑う介護。』(成美堂出版)を何の説明もなく手渡しました。ヒロさんは「ライターのお仕事をしていると聞いていたけど、本も出していたの!?」と、ものすごく驚いていましたが、「わかった」とそれを受け取ってくれました。

お母さんも「介護は人生経験」と前向き評価

 数日後、『笑う介護。』を読んだヒロさんは「そんなに隠すことかな? 介護のことを知らない自分は、まずはご両親に会ってみたい」と、予想もしなかった前向きな感想をくれました。

 さらに、ヒロさんがうっかりテーブルに置きっぱなしにしていた本をお母さんも読んでしまったというではありませんか! これには私も、「さすがに、お母さんは引いたよね……」と意気消沈。ところがヒロさんの話では、世代的に介護が身近なこともあって、「若いうちからいろいろな経験をした人なのね」と、むしろプラスに捉えてくれたというのです。

 ……と、そんなこんなで、私はヒロさんと結婚しました。

私は話して「正解」でしたが…

 先に結婚したヤングケアラー(親などを介護する若者)仲間が「介護のことは隠さなかったよ」と言っていたように、家族の介護のことを話したら去るような人であれば、きっとその先もうまくいかないでしょう。それはわかっているのですが、私自身、苦しい日々の中で心の支えになってくれていた当時の恋人を「家族の介護」のために失ったことで、一時は生きる希望さえ持てなくなってしまったのも事実です。

 ですから、何が正解かはわかりません。ただ、私の場合は結果として、ヒロさんにすべて話しても、いや、むしろ話したお陰で運命がよい方向に進み出し、今の家族があるのです。(岡崎杏里 ライター)

登場人物の紹介はこちら

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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1件 のコメント

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しろ

岡崎さんこんにちは。 まもなく30歳の女性です。 20代前半にお付き合いした彼に、両親について話したところお別れしました。 それから数年が経ち3...

岡崎さんこんにちは。

まもなく30歳の女性です。
20代前半にお付き合いした彼に、両親について話したところお別れしました。
それから数年が経ち30歳目前となり不安に押し潰されそうになっています。
紹介していただいた方が居ても、きっと駄目だろう、相手にも迷惑だろう、と前向きになれずにいます。
何故友人たちと同じように恋や遊びを楽しめないのだろと、誰かを責めたくなってしまいます。責めたくなる自分の弱さにも嫌気がさしてしまいます。
そんなとき介護について調べていたら、こちらに辿り着きました。ひとりっこで介護をされていることや、似た経験をされた方が居ることを知れました。
私だけではなかったんだと、気持ちが楽になりました。そしたらコメントしたくなりました。同じように素敵なご家族を持つことができるか分かりません。でも希望を捨てなくてもいいと思えました。
ありがとうございます。

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