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コラム

『続・孤独のすすめ―人生後半戦のための新たな哲学』 五木寛之著

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孤独は永遠の荒野などではない

『続・孤独のすすめ―人生後半戦のための新たな哲学』 五木寛之著

 「これほど多くの人が孤独を感じ生きているのか」――。

 高度経済成長期から今日まで人気作家として歩んできた五木寛之氏は、孤独におびえる現代人の心をわしづかみにし、日本社会に孤独ブームを巻き起こした。2017年刊行の『孤独のすすめ』は30万部のベストセラーとなったが、これには当の五木氏自身も驚いたという。

 続編となる新刊『続・孤独のすすめ』では、現代人がなぜ孤独におびえるのか、その 深淵(しんえん) を見つめ、孤独の豊かさと可能性について思いを巡らせたうえで、具体的な孤独の楽しみ方、孤高に生きた、たたずまいの美しい人々を紹介し、「孤独は永遠の荒野などではない」と柔らかく語りかける。つながりを求めてさまよう、寄る辺ない現代人の心に染みる一冊だ。

 この国では、もはや一般世帯の約35%が独居世帯なのだそうだ。

 核家族化が進み、配偶者と死別して独居となったお年寄りが増え、結婚をためらう若者が増加したせいか……。スーパーでは一人分のお総菜が売られ、居酒屋も旅館も一人客を歓迎する時代になり、一昔前に比べれば独り暮らしは格段に快適になった。けれど、静まり返った家の中では心の痛みをごまかせず、眠れぬ夜もあるだろう。孤独ブームの背景には、こうした独居世帯の急増があるのかもしれない。

 一人は気ままなはずなのに、孤独におびえ、つながりを求め、若い人たちはスマホの中に居場所を探す。「人びとが孤独に弱くなって、孤独は悪であり、人間としてのさびしい道であるというふうに考える風潮ばかりが強くなってきている」と五木氏。

 「だれもがいずれ一人で、孤独の中で死ななくてはならない」にもかかわらず、現代人は極度に孤独死にもおびえている。だが……、と五木氏は問う。若くして出家し、歌を詠みながら一生を過ごした西行はどうだ。「願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」とは究極の美しい孤独死ではないか。孤独死は「哀れだとも思わないし、悲惨だとも思わない」。そんなに孤独におびえなくても大丈夫なのだ……というメッセージにあふれている。

 忍び寄る孤独に負けそうな夜には、ぜひ手に取ってほしい。

 (中公新書ラクレ 780円、税別)

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