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本田秀夫「子どものココロ」

医療・健康・介護のコラム

「みんなと一緒」の強要は絶対にだめ! 自己肯定感を育んで…自閉スペクトラム症の子

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 自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちへの接し方、育て方、教育方法について紹介します。

 前回ご紹介したASDの特徴の多くは、他者から見た行動を中心に述べたものです。どんな行動にも必ず、理由となる心の動きがあります。ASDの人のとる行動がわかりにくいのは、考え方や感じ方が一般の人と異なるため、一般の人からみて共感しにくいからです。

 ASDの子どもたちへの接し方、育て方、教育を考えるには、まず子どもたちがどのように物事をとらえ、考え、感じるのかを推察する必要があります。

「みんなと一緒」の強要は絶対にだめ! 自己肯定感を育んで…自閉スペクトラム症の子

イラスト:高橋まや

わかりにくい行動の「理由」を探る

 ASDの子どもたちに共通する考え方や感じ方を整理すると、以下のようになります。

・他者の気持ちを直感的に察することをしない

・耳からよりも目からの情報処理を著しく優先する

・因果関係の明確なパターンを好む

・自分の予想通りに事が進むことを好む

・予想外の出来事に動揺しやすい

・興味が特定の物事に偏りやすく、没頭しやすい

・興味のないことは、なかなか頭に入らない

 前回、知らない人を見て、その人に聞こえる声で「あの人,太ってるね」と発言して親を慌てさせた事例を紹介しました。これは、自分の発言で相手がどう思うかをとっさに判断することをせず、思ったことをそのまま発言してしまったのです。また、特定の遊びをいつまでも繰り返す子どもや、特定の話題を一方的に話しかけて相手の反応には無頓着な事例も紹介しましたが、ここからも「興味が偏りやすく没頭しやすい」ということがうかがわれます。

本人にわかる伝え方 強制せず、自己決定を促す

 ASDの子どもの特徴のうち、教育を考える鍵となるのは、「耳からよりも目からの情報処理を著しく優先する」という特徴です。

 一般的な子育てや教育では、大人の言うことをよく聞いて活動することが求められます。多くの子どもたちは、聞くだけで内容を理解して見通しを持ち、自分が何をすべきかを判断して行動します。しかし、ASDの子どもたちは、同じ内容であっても口頭の指示だけではピンとこないのです。その結果、見通しを持てず、何も行動しない、あるいは的外れな行動をとることになり、大人に注意されることになります。それは子どもにとっては予想外の出来事で、カンシャクを起こす結果となるのです。

 ASDの子どもには、目に見える形で情報を伝えることが、最も重要なポイントです。子どもの理解力に合わせて、「実際に使う物を手に持って示す」「写真や絵を使う」「文字を使う」などのやり方で、今の状況やこれからの予定などを、本人がわかる形で伝えるように努めます。子どもが伝えられたことを理解し、見通しを持てたら、その後にどのような行動をとるかは子どもの自己決定に委ねます。大事なことは、行動を強制するのではなく、状況を理解して自己決定することを促すことです。

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本田秀夫(ほんだ・ひでお)

 1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授。同学部付属病院子どものこころ診療部長。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。

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1件 のコメント

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みんな一緒と違いにまつわるエトセトラ

寺田次郎 放射線科サッカー部スペイン代表

「女心がわかんなきゃお嫁さんになってあげないぞ」なんて昔のアニメにありましたが、わかっても合わせたくない場合もあります。 そういう組み手争いも含...

「女心がわかんなきゃお嫁さんになってあげないぞ」なんて昔のアニメにありましたが、わかっても合わせたくない場合もあります。
そういう組み手争いも含めて人間関係です。
判断や行動はある程度の幅で許容されるべきです。

そういう意味では、大人の社会は生活が自立できている限りにおいて楽ですね。
学校や会社では嫌な人とも関わらないといけませんから。

もちろん、自由度の高い生活を選ぶことが「しがらみを失う」という意味も理解するべきでしょう。

みんなと一緒と言えば、機会平等と結果の平等の理解も大事です。
それらが、本当の平等ではなく、皆の気分や政治に動かされがちなことも。

そういう毒をわかったうえで、違いに対する不平や不満がエスカレートすることの愚かさを我々は訴える必要があります。

「他者の気持ちを直感的に察することをしない」ように見える時、他の情報を優先する場合と情報の処理が間違っている場合と情報の処理後の行動のエラーがあり得ます。
(間違いやエラーの基準も人それぞれ、時代それぞれですね。 300年前の人が我々を見れば、農民でない平民の多さとちょんまげの少なさに驚くでしょう。)

おそらく、書籍とか昨今の映像機器により、人間や自然を相手にする時間が減り、自分の見たいものや聞きたいことだけ聴けるようになった弊害は間違いなく自閉症スペクトラムや類似の病態にも関わってくることでしょう。

スポーツにおいても「相手を見ること」に成長のコツがあることを知れば、全国の運動部員から徐々に変わって行くことでしょうか?

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