心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」
医療・健康・介護のコラム
帰宅したら妻と娘がいない…「やり手部長」の裏でDV、ギャンブル 43歳男性を変えた妻からの「四つの条件」
「この前、突然、妻と子どもがいなくなったんです……」
とK夫さんは、沈んだ口調で話し出した。
43歳男性。うつ病の自己診断尺度は34点で、とりあえず、「抑うつ状態」だと判断した。
彼は、有名な大手不動産会社の営業部長。なかなかのやり手で、昇進も順調な様子だ。奥さんは、同じ会社の部下だった人。彼の8歳年下で、3歳の娘がいる。
仕事も家庭も順調だと思っていたが、2週間前、帰宅したら妻と娘がいなくなっていた。「家を出ます。探さないでください」という短い書き置きだけが残されていた。
「本人も苦しんでいる」と診断書を…
K夫さんは途方にくれた。
「妻の実家に電話してもいないし、知り合いに連絡をとっても手がかりがなかった。毎日、どんよりした気持ちで過ごしました。気分は落ち込むし、眠れない」
実は2日前になって奥さんの行方がわかったという。本当は実家に戻っていたのだが、本人の希望で、両親がそのことを教えてくれなかったのだ。
「家内もずいぶん怒っているみたいなんです。できれば診断書を書いてもらえないでしょうか? 『本人もうつになって苦しんでいる。家に戻ってやりなおすのが一番の薬だ』って」
さすがにちょっとあきれながら、私は尋ねた。
「来院してすぐに、その診断書はちょっと……。でも、一体何があったんですか?」
「いや、ちょっとした行き違いなんですよ」とK夫さん。
「娘のことでちょっと口げんかになって。家内がちょっと感情的になっちゃったんです」
「奥さんに手を上げるようなことは?」
「とんでもない! いやまぁ、若い頃、2、3度くらいはありましたよ。教えさとすようなつもりで。そうですね。平手打ちに近い感じでやさしく……。家内はちょっと大げさなヤツなんですよ」
「そうですか。軽いお薬はお出ししますが、まずは奥様としっかりお話しなさってください」
私がそう告げると、彼は肩を落としながら出て行った。
妻からの「怒りの手紙」
次の受診は2週間後だった。弁護士を通して、妻の手紙が届いたという。その内容は、次のようなものだった。
「あなたにはつくづく愛想が尽きました。結婚するときは、きっと幸せにすると言いながら、私をそっちのけで、仕事とゴルフと競馬三昧。競馬で200万円の借金を作った時は、もう二度としないと誓ったけどウソでしたね。私を殴ったことも今度で十数回めです。骨を折って救急病院に運ばれたときも、あなたはお医者さんに、勝手に転んだだけだと、身勝手な言いわけばかりしていました。
そして今回、3歳の娘を張り飛ばすなんて。テーブルに頭をぶつけたときは、このまま死んじゃったらどうしようと思いました。最初は私の両親のために、その後は娘のためにずっと我慢をしてきましたが、もう限界です。家を出るのももう三度目。あなたは、また戻ってくると思うでしょうが、もう二度と戻りません!」
奥さんの怒りが文面から立ちのぼるようだ。
「こんな手紙をもらってから、ますます具合が悪いんです。診断書を書いてもらって、弁護士に送りたいんですが」
「いゃ、やはり誠心誠意、謝ることが先じゃないですか?」
一応、診断書は書いたが、彼にはそう話してみた。
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加害更生プログラム、日本ではまだ少ないけれど、DVという行動に出ないため、そして被害者保護のための学びのプログラムがあります。
DVによる別居は学びのチャンスです。厳しい条件と言うけれど、それほどでもないと感じました。DV夫は賢くサイコパスのように嘘をつくので、一時的に抑えられても何かのきっかけでDV行動にでるために条件の解釈をねじ曲げたり特例を作ります。
妻側は配偶者暴力センターなどと繋がり、DVの記録と証拠をつけていらっしゃるかしら。
怒りは我慢するのではなく根本から見直して絶やす。自分の価値観を見直す必要があります。DVと児童虐待にはサイクルがあり、ハネムーン期は本当に改心更生したのかと思うけれど、また蓄積期爆発期と繰り返すうちどんどん内容がひどくなり、妻は洗脳支配されて逃げることが難しくなります。研究ではDV家庭では平均7回別居と同居を繰り返すのだそうです。日本の男尊女卑な思想や教育的暴力を肯定してきた社会はDV夫をつくりやすい。もちろんDVをする女性もいますが。
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いくら常識的に考えてどうしようもない夫だったとしても、奥さんも小さい子供を抱えて経済的に見ても教育的に見ても、離婚は避けたかったという訳でしょう。一度ひどい間違いを犯したのに、これだけ頑張って持ち直せる夫はそうそうはいませんから、報われてしかるべきだと思います。またすぐに逆戻りをしておじゃんな人がほとんどなのに。
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