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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

眼球使用困難症候群で身体障害者手帳…認定の動き

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機能がよくても自在に使えない病態に理解

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 こうした医学的知識は、昭和24年当初にはほぼなかったのです。

 その後の医学的進歩で明らかになった眼球使用困難症候群が、今日になっても視覚障害として取り上げることにならない背景はいくつか考えられます。

 敗戦直後には、身の回りのことをするのが難しい失明状態だけを想定し、そういう人を障害者としようといった意識しかなかったのではないでしょうか。当時は、道路に自動車が走るのは今よりはるかに少ないですし、仕事といえば肉体労働をまず意識したでしょう。

 つまり、今日ほど視覚を酷使する社会生活ではなかったのです。なので、身体障害者の中でも視覚障害の認定基準はとくに厳しいことになってしまったのでしょう(2018年6月14日のコラム 「日本の視覚障害者は少なすぎる?…厳しい認定基準への疑問」 参照)。

 この程度の意識では、視力視野では表現できない、従来の視覚障害者と同等かそれ以上に苦しい状態にあるこの症候群に思いをはせることはとてもできません。

 しかし、私がこの症候群を提唱してから、それに該当する方々が厚生労働省や、メディアに向けて少しずつ声をあげるようになりました。

 私も、身体障害者手帳や障害者年金の申請書に、眼球使用困難症候群がいかに生活上厳しいものかを、例えば目は我慢すれば少しは使えるが、無理に使えば身体症状が出現し、何日も寝込まなければならなくなるといった実態を、申請書の欄外などを利用して記述しました。

 門前払い、却下、不服申し立て、再却下など、よいニュースはなかなかなく、申請疲れで諦めてしまう方もありました。却下理由に詐病とは書かれていなくても、そういうニュアンスがにじんだものもありました。

 しかし、ここ半年で視覚障害者に認定された例が3例出ました。

 判断は自治体に委任されているようですが、ようやく脳の誤作動によって眼球自体の機能がよくても、それが自在に使えなくなるという病態があるのだという事実への理解が深まってきたのだとしたら、とても好ましいニュースです。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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