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ゴミ集積場まで遠い35メートル…高齢夫婦「続けていたらダウンしていた」

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ゴミ集積場まで遠い35メートル…高齢夫婦「続けていたらダウンしていた」
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酸素吸入器を付けたまま自宅敷地内のゴミ箱にゴミを入れる高齢者。千葉県流山市では、ゴミ集積場までの運搬が困難な高齢者宅に清掃業者が出向き、ゴミを回収する支援を行う

 高齢化が進む中、病気や体の衰えによって自力でのゴミ出しが困難な高齢者が増えている。自治体の支援拡充に向けて環境省はガイドライン(運用指針)の策定に乗り出したが、将来的な人手不足などにどう取り組むかが、支援制度が成功するかどうかのカギを握る。

 「私たち夫婦でゴミ出しを続けていたらきっとダウンしていた。本当にありがたいことです」。千葉県流山市に住む男性(86)は取材に笑顔を見せた。

 男性と妻(83)は昨年秋から流山市のゴミ出し支援を受けている。自宅の敷地内に設置したゴミ箱にゴミを入れておけば、市が委託する清掃業者が週1回やって来て無料で回収していく。ゴミの分別は週5回通うヘルパーが手伝ってくれる。

 それまでは自宅から約35メートル離れた集積場まで男性か妻が歩いてゴミを運んでいた。だが、男性は肺気腫を患って酸素吸入器が手放せず、荷物を持ち歩くのは難しい。息が切れ、休み休み何分もかけてゴミを運ぶ姿を近所の人に見られたくなくて、ゴミ収集日の前夜に出していたという。

 流山市の支援は、〈1〉おおむね65歳以上の高齢者や障害者の世帯か単身者〈2〉近所の住民や家族の協力を得られない――ことなどを条件とする。実際の利用者は80歳以上が多く、制度がスタートした2012年4月の100世帯から140世帯に増えた。ただ、利用者は流山市の65歳以上の人口(約4万5000人)の0・4%に満たず、支援を担う市クリーンセンターの糸井正人所長は「情報量の少ない高齢者に制度を知ってもらうのは難しい。ヘルパーや家族への発信を強めて利用者を増やしたい」と話す。

孤独死防ぐ狙いも

 ゴミ出し支援には、ゴミ回収のために定期的に高齢者宅を訪問することで孤独死を防ぐ狙いもある。

 栃木県下野市は、事業を委託するシルバー人材センターの会員が高齢者宅の玄関先で声をかけた上でゴミを引き取る。市職員がゴミの回収に出向く福島市では、高齢者に必ず声をかけ、異常があれば、離れて暮らす親族などに連絡する。

 国立環境研究所の調査では、ゴミ回収時に高齢者への声かけを行う自治体のうち、高齢者の不調やトラブルを発見した事例がある自治体は4割に上る。室内で倒れていた高齢者を発見して命が助かったり、不審な業者が自宅に上がり込んでいたのを見つけたりしたケースもある。

 総務省などによると、日本の総人口に占める65歳以上の割合は28%(17年10月時点)だが、36年には33%に達し、3人に1人が65歳以上になる。今後、支援の必要性は高まっていく一方、将来的には支援の人手不足の問題が待つ。

 福島市は、支援がスタートした07年から、利用世帯数は2・5倍の約1000世帯に増えた。市の担当者は「このまま増え続ければ、自治体の職員だけでは手が回らなくなる恐れがある」と指摘する。

ボランティアに市が「回収金」…仙台、人手不足で

 こうした人手不足に対応するため、民間ボランティアらがゴミ回収を行う動きも出ている。

 高齢者宅のゴミの回収を地域の町内会やボランティア団体が担う仙台市。市は昨年10月以降、ゴミを回収する団体などに対し、1世帯の回収につき140円を支給する助成金制度を始めた。市家庭ごみ減量課は「担当の市職員が少なく、支援を継続するために地域の力を借りることにした」と説明している。

 東邦大の きし 恵美子教授(公衆衛生看護学)は、「孤独死や、身の回りのことができなくなるなどで心身の健康が脅かされる『セルフネグレクト』を防ぐには、近隣住民を巻き込んで地域全体で支援することが必要。幅広く利用しやすいものにしてほしい」としている。

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