思春期の子どもを持つあなたに 関谷秀子
妊娠・育児・性の悩み
第5部 反抗挑戦性障害(上)周囲に暴力を振るっていながら、「先生はわかってくれない……」小学6年男子
健康な精神発達において、子どもが大人に反抗的な行動をとることはごく普通のことである。特に、親離れが始まる思春期には、それまでとは異なる自分自身を作り上げていく過程で、親や教師らに対して反発することもある。一方で、度を越して怒りっぽかったり、口論が好きで挑発的な行動をとったり、意地悪で執念深かったりなどの症状が半年以上続く場合には、「反抗挑戦性障害」と診断される。ADHD(注意欠陥多動性障害)や発達障害の二次的な症状として現れることもある。
「次は先生にカッターを投げつけてやる!」
小学6年生のB君は3人兄弟の末っ子です。父親の仕事の都合で福岡から東京へと引っ越しをしてきました。ところが転校後に間もなく、同級生をたたいたと、母親が学校から呼び出されました。
その時のことを、「友達を作ろうと努力したBに周囲が冷たかった。挑発されて手を出しただけなのに、あの子だけが担任から叱責された」と不満を持っていました。
母親はそう考えていたものの、実際にはその後もB君の乱暴な行動はおさまりませんでした。2学期になると同級生の男の子のおなかを蹴って、その子は検査入院となってしまいました。また、好きな女の子を追いかけ回してほっぺたを触ろうとしたり、後ろからその子の髪の毛を強く引っ張って転ばせてしまったりすることがありました。
再び学校から呼び出された母親は、「いくら注意しても反省がない。いつも言い訳をしたり、人のせいにしたりする。ほかの生徒が安心して学校に通えない」と伝えられました。
B君は「クラスで悪いことが起こると全部僕のせいにされる。ちょっとぶつかっただけで皆がやり返してくる。先生はいつも皆の味方をする」と訴えているそうです。
そこで真偽を確かめようと、しばらくの間、母親が付き添って登校してみました。
B君に乱暴な行動は見られません。安心したことで付き添いをやめたら、2週間後にまた学校に呼び出されました。
今度は、学校の花壇で苗を蹴散らしたことが問題になっているとのこと。
本人は、「同級生につかみかかられて、花壇に倒れてしまっただけ。わざとじゃない」と訴えていました。学校側はB君の言い分は全く聞き入れません。母親は「この学校では理解してもらえない」と考え、転校を申し出ることにしました。
ところが、今度はB君が「僕は転校なんかしない。先生には徹底的にやり返す。今度、何か言われたらカッターを投げつけてやる」と言い出しました。
「反抗挑戦性障害の可能性があるから、専門家を受診した方がいい」と養護教員に勧められたことで、母親は納得してはいなかったものの、クリニックに来院しました。
1 / 2
【関連記事】
大人も子供も意見交換出来る場所
由翼希(ゆうき)※知的障害者当事者
一昔前なら「20歳から大人」・現在にいたっては「18歳から大人」という論争がある通り、「大人から見た子供」・「子供から見た大人」は、ヒトそれぞれ...
一昔前なら「20歳から大人」・現在にいたっては「18歳から大人」という論争がある通り、「大人から見た子供」・「子供から見た大人」は、ヒトそれぞれに考え方や気持ちがあるモノだと思います。やっかいなのは自分自身でも障害者のでは無いかと子供自身が思っている場合、大人のヒトはただあからさまに自分自身が思っている事を子供に言わず、何と無くで良いと思うので彼らがどういう時に生き辛さを感じるかをそれなと無く聞き出せると良いと思います。「言い方が分からなくなるなら暴言を吐く」・「手振り素振りが分からなくなるから暴力をふるう」という考え方をすれば、恐らくグレーゾーンの低迷期を生きにくさを解消出来ると思います。ぜひお互いに無理せずに意見交換出来る場所を見つけて話し合ってみましょう。もちろんゆっくり焦らずに。
つづきを読む
違反報告
閉鎖社会で多い反抗挑戦性障害の「大人」達
寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受
「度を過ぎた不器用な愛情表現」「過度の思い込み」というのがしっくりくるでしょうか? 進学校や医学部にも結構いますね。 過度のプレッシャーを感じて...
「度を過ぎた不器用な愛情表現」「過度の思い込み」というのがしっくりくるでしょうか?
進学校や医学部にも結構いますね。
過度のプレッシャーを感じて自閉症様の表現を示す人間。
普段の我慢や、目にする情報や仕事、人間の偏りの影響が、はけ口になりうる他人に暴発し連鎖する。
パワハラやセクハラの一部もそうでしょう。
コミュニケーションの標準値や幅を思い描けば理解も早いと思います。
この子の問題の根源は親の問題も一緒でしょう。
両親ともに他人に厳しく自分に甘い。
浮気はした方に問題がある場合もありますが、される方の人格や行動、もっと根底的な社会構造に問題がある場合もあります。
「そもそも人間は弱く、寂しがり屋」「大人は仮面をつけた子供」という理解が不足しています。
今の日本社会は一夫一妻ですが、そうでない社会もあり、生物学的にはむしろ珍しいものです。
この子は両親に甘えられないから、むしろ、他人であるはずの教師や同級生に自我の暴走を表出させています。
過ちを認めていないわけではなく、認めるとさらに攻撃されるのではないかという潜在的認知・恐怖が、彼に表面上の理解能力の乏しさを伴う攻撃的な態度を取らせているのでしょう。
そんなこと、普通の教師にはわからないことかもしれません。
一方で、誰しも他人の全てを理解し、受け止めるのは、難しいことで、発達障害の大きなレッテルの重みも含めて処遇を考える必要があります。
(昨今の大災害のPTSDの影響も含めて、難解です。)
何処までも寄り添うのが正しいわけではありませんが、背景事情を読み取り、この子なりの人生の修正を考えてあげられる社会になるといいですね。
往々にして、こういう子の親は金銭的に極端な状況が多く、単純な隔離がベターな回答にならない複雑さがあります。
一方で、頭の柔軟な子供の方が「大人になる」方がまだ簡単である難しさがそこにあります。
つづきを読む
違反報告