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石飛幸三の『人生の最期をどう迎えるか』

コラム

特養で心停止、救急搬送で「不審死」扱い 誰が責任を持つのか

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平均90歳のホーム入所者 生命力が強いのは女性

 私は特別養護老人ホームの常勤医師です。平均年齢90歳の入所者100人の人生の最終章を () ています。男性は1割しか居ません。90歳にもなると男性はほとんど亡くなっていますから、90%は女性です。

 女性は男性ホルモンが少ないので骨が弱く、 大腿(だいたい) 骨骨折の既往がない女性を見つけるのが難しいほどです。しかし、女性は骨が折れても生命力が強いから生きています。頑張らされているのです。それでなくても、戦後のあの厳しい状況を乗り切ってきた人たちです。いろいろな意味で、団塊の世代の人たちとは違って鍛えられています。病歴、生活歴、家族関係が、それを示しています。

死因に増える「老衰」 認知症を経る人も多く

 最近は、死因の欄に老衰と書くことが増えました。そして直接の死亡原因ではありませんが、死亡までの経過に影響を与えたものを書く欄がありますので、そこに認知症と書くことが増えてきました。がんでも死ねない、メタボでも死ねない、すると () けてきて夢の中に漂う。そんな世界で、長く生かされているのです。これは本人が望んでいたことなのかと、つい疑いたくなります。

心停止で救急搬送 患者を知らぬ医師は死亡診断書を書けず

特養で心停止、救急搬送で「不審死」扱い 誰が責任を持つのか

 先日、こんなことがありました。隣の市に講演に行った帰りに携帯電話が鳴りました。勤務先のホームからです。今朝、ホームを出る前に見た92歳の元床屋のおじいさんが、トイレから出てこないので、介護士が確認したら倒れていたとのこと。慌てて呼んだ救急車が今着いたところで、心停止状態のおじいさんが心臓マッサージを受けているということでした。

 私は、駆けつけた救急隊の責任者の方に電話に出てもらいました。「無理な延命は望まないとご家族からも聞いているし、私は本人の身体的な状況も知っています。帰り次第、死亡診断書を書きますから引き揚げてください」と申したところ、救急隊員が「先生、心臓が動き出しました」と言うので、私は「それでは運んでください」と答えました。しかし、医療機関に着いた時には心停止しており、そこの医師は診断書を書けませんでした。生前に診察しておらず、亡くなった状態で見ているからです。

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石飛幸三(いしとび・こうぞう)
 1935年、広島県生まれ。慶応大学医学部卒。ドイツのフェルディナント・ザウアーブルッフ記念病院、東京都済生会中央病院で血管外科医として勤務。プロ野球投手の手術も多く手がけた。2005年12月より、世田谷区立特別養護老人ホーム・芦花ホーム常勤医。10年に「平穏死」を提唱し、反響を呼ぶ。著書に「『平穏死』のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか」(講談社)、「『平穏死』という選択」(幻冬舎ルネッサンス新書)、「『平穏死』を受け入れるレッスン」(誠文堂新光社)、「穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語」(さくら舎)など。

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1件 のコメント

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私の手順

miikun

>しかし、医療機関に着いた時には心停止しており、そこの医師は診断書を書けませんでした。生前に診察しておらず、亡くなった状態で見ているからです。 ...

>しかし、医療機関に着いた時には心停止しており、そこの医師は診断書を書けませんでした。生前に診察しておらず、亡くなった状態で見ているからです。

生前に診察していない医師は、死亡診断書は書けませんが、死体検案書を書くことはできます。

石飛先生に電話するなどして、事情を聞き取り、CT検査など実施し、それらの情報から、異状(いわゆる事件性)がないと判断できれば、死体検案書を作成します。この場合、警察の出番はありません。

たとえ警察に通報したとしても、電話の会話だけで終わることもあります。
警察が病院に来たとしても、警察官から「事件性はないみたいなんですけど、検案書を書いてもらえませんか」と依頼されれば、検案書を書きます。
予想に反して、警察が御遺体を引き取ると言い出したときは、その指示に従うことになります。

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