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従来薬が無効のC型肝炎に新薬

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従来薬が無効のC型肝炎に新薬

 C型肝炎ウイルス(HCV)に直接作用して増殖を抑える直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が登場したことで、多くのC型肝炎患者が治癒するようになった。だが、DAAでも効果が得られない治療不成功例が存在し、新たな治療法が求められている。大阪大学大学院消化器内科学教授の竹原徹郎氏は、1月25日に東京都で開かれたメディアセミナーで講演し、今年(2019年)1月に承認されたソホスブビル/ベルパタスビル配合剤(商品名:エプクルーサ、2月26日発売)について解説した。DAAによる治療が失敗した患者の約97%で有効性が得られたとして、「治療失敗例に完璧な治療法がない中で、アンメットニーズが満たされた」と述べた。同配合剤は重度の肝硬変(非代償性肝硬変)に対しても、国内初の薬剤として承認を取得した。

DAA治療不成功例でのウイルス排除率は97%

 C型肝炎はDAAによる治療で著効率が劇的に向上したが、DAAが効かない患者も一部存在し、救済法の確立が課題であった。ソホスブビル/ベルパタスビル配合剤は、そうしたDAA治療不成功の患者に対する治療薬として適応を取得した。国内では同じ適応を持つ薬剤は、ピブレンタスビル/グレカプレビル配合剤(商品名:マヴィレット)に続いて2剤目となる。

 DAAを含む前治療が不成功だったゲノタイプ1または2のC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変患者に対するソホスブビル/ベルパタスビル配合剤の有効性、安全性を検討した国内第III相試験では、リバビリンと併用して24週間投与した場合の有効率(SVR12達成率=投与終了12週間後のウイルス陰性化率)は96.7%で、C型肝炎ウイルス(HCV)を高率に排除することが示された(

図. DAA既治療例に対するSVR12達成率

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〔承認時評価資料(国内第III相試験)〕

 竹原氏は「DAAでC型肝炎ウイルスを排除できない治療不成功例では、薬が効きにくい耐性変異ウイルスが高率に生じていることが分かっている。ソホスブビル/ベルパタスビル配合剤の臨床試験に参加した患者も非常に複雑な耐性変異を有していたが、60例中58例に有効であった」と評価した。

重度の肝硬変に対する国内初の抗ウイルス薬

 ソホスブビル/ベルパタスビル配合剤は、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎に対する承認も取得した。肝硬変の症状は多彩で、黄疸、腹水、脳症、食道静脈瘤、出血傾向などが見られる。重症度に応じて2つのタイプに分類され、肝機能がある程度保たれている状態を「代償性肝硬変」、さらに進行して肝臓の働きが失われると「非代償性肝硬変」に至る。国内の非代償性肝硬変の患者数は約3万5,400人と推定される。

 DAAの登場により、C型肝炎から進展した代償性肝硬変では、HCVの排除が可能になったが、これまで非代償性肝硬変には有効な治療法がなかった。ソホスブビル/ベルパタスビル配合剤がこの疾患に使用できる国内初の薬剤となったことで、抗ウイルス薬による治療が可能になる意義は大きい。

 非代償性肝硬変を伴うC型肝炎患者に対するソホスブビル/ベルパタスビル配合剤の有効性と安全性を検証した国内第III相試験では、SVR12達成率は92.2%であった。治療歴、年齢、肝硬変の予後予測指標であるMELDスコアなどの患者背景の違いによって、有効性に大きな差はなかったという。

 患者の重症度別に有効性(SVR12達成率)を見ると、グレードBの患者は95.0%、グレードCで80.0%と、重度の肝硬変患者でも高い効果が得られた。

 治療によりHCVを排除する意義について、竹原氏は「肝機能が改善した。また、アルブミンの値が良くなり、体のむくみが消え、腹水も改善することが期待される」と解説。一方で、「長年の炎症により硬くなった肝臓や、合併症である食道静脈瘤がどの程度改善するかは十分分かっておらず、今後の課題である」と指摘した。(あなたの健康百科編集部)

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