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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

「抜いてください」と言われても…本当にまつ毛の問題?

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実は病気や感覚異常…単に片付けられない場合も

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 逆さまつ毛は加齢によって若干増えてきます。これは、下まぶたの組織の緊張が緩むことで、眼瞼全体がぐるりと眼球側に巻かれて、まぶたの縁に生えているまつ毛が眼球表面に接する状態になるためです。

 真の逆さまつ毛は決して多いものではありませんが、今日でも「まつ毛が刺さった」という訴えで来院する人は結構いますので、眼科専門病院たる当院でも、以前は「まつ毛を抜く当番医師」を決めていたものです。

 当番医師は抜くべきまつ毛がなく、心の中ではおかしなことだと思いながらも、「ごろごろする」「しょぼしょぼする」のがまつ毛のせいだと思い込んで来院するお年寄りのまつ毛を、2、3本抜去することが習慣になっていました。患者がそれで一時的には満足してくれたからです。

 もちろん、本当に逆さまつ毛なら抜去の処置や、手術が有効です。

 しかし、必要のないおかしな習慣が、まつ毛が刺さってでもいるかのような異物感、不快感に対する、真の原因を探す医師としての役割を放棄することになりはしなかったかと、今私は思うのです。

 ドライアイなど眼球表面の不具合でもそういう訴えは出ることがあります。それよりもっと重篤で頑固な眼球と関係のない感覚神経系の過敏性が原因しているのかもしれません。

 私の外来には、まつ毛の問題と思い込んでいる方が、実は脳の誤作動で生じる眼瞼 痙攣(けいれん) という病気や、薬剤その他様々な原因による高次脳機能の問題で生じた感覚異常のことがあります。

 このように、頑固な目の表面の異物感、不快感は、単にまつ毛のせいと片付けられない場合のあることは知っておいてよいことでしょう。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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