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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

「抜いてください」と言われても…本当にまつ毛の問題?

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「抜いてください」と言われても…本当にまつ毛の問題?

 「まつ毛がまた刺さりました」「まつ毛を抜いてください」

 もう30年以上前のことですが、街の開業医さんが入院療養することになり、長くは休診にできないので応援の医師を送ってほしいと大学の眼科に要請があって、私も何度か出かけた時のことです。

 上記のような、逆さまつ毛の訴えで通院する患者が多いのに驚きました。大学病院しか知らない若造が、大学病院と街の眼科の患者の訴えの内容がこうも違うのかと気づいた出来事でもありました。

 ところが、そういう訴えの方々を診ても、本当にまつ毛( 睫毛(しょうもう) )が眼球表面に接している人は少なく、「まつ毛を抜いてください」と言われても、抜くべきまつ毛がなくて困りました。

 ところで、まつ毛自体の生え方の問題(睫毛 乱生(らんせい) )、まぶたの構造上の問題( 眼瞼(がんけん) 内反)など、逆さまつ毛の原因にはいろいろあります。

 日本人の乳児には、眼瞼の構造的特徴から本来外向きに生えるべきまつ毛が内側にカールして眼球表面に接している状況がみられることがあります。

 3、4歳になると構造がしっかりして自然に改善する場合が大半で、大人になってもまつ毛の問題が残る人はまれです。ただし、トラホームのように 瘢痕(はんこん) (傷痕)を残し、まぶたが変形しやすい結膜炎が 蔓延(まんえん) していた戦前や戦後すぐのころは、まつ毛が眼球表面に当たり、異物感を訴える人がかなりいたようです。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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