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石飛幸三の『人生の最期をどう迎えるか』

医療・健康・介護のコラム

寿命でも生かそうとする医学 本人の意思尊重の流れ

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医療保険はセーフティーネット 権利とともに責任も

 「寿命が来たなんて人間に判定できない。それができるのは神だけだ」というのが従来の考え、いわゆる父権主義(パターナリズム)です。それは「命は地球よりも重い」という延命至上主義でもあり、貧しくて、食べ物がなく餓死する時代には、食べ物を与えて下さるお上の恩情、父のようなものでした。しかし、今の日本は世界でも類を見ない超高齢社会。物質文明の行き着いたところで、生き方の矛盾が起きています。いつまでも生かそうとするのです。

 医療保険は、困ったときにお互いを支え合うセーフティーネットです。みんなに権利とともに、制度を適切に利用する責任があるのです。しかし、権利ばかりを主張して、責任を果たそうとしていないことが少なくありません。

国民は本音ではわかっているが……

 これではダメだと、多くの国民は本音ではわかっています。でも、世間体があります。何もしなかったら、後で周りから批判されるかもしれない。だから、もう明らかに寿命で駄目だとわかっていても、優等生でいたいから救急車を呼んでしまうのです。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」の理事長・樋口恵子さんが、先日おっしゃいました。「実は誰もがわかっているのですよね」と。

 本音ではわかっているのにできない。ここをブレイクスルーしなければならないのです。今、日本が一番問われていることかもしれません。(石飛幸三 特別養護老人ホーム常勤医)

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石飛幸三(いしとび・こうぞう)
 1935年、広島県生まれ。慶応大学医学部卒。ドイツのフェルディナント・ザウアーブルッフ記念病院、東京都済生会中央病院で血管外科医として勤務。プロ野球投手の手術も多く手がけた。2005年12月より、世田谷区立特別養護老人ホーム・芦花ホーム常勤医。10年に「平穏死」を提唱し、反響を呼ぶ。著書に「『平穏死』のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか」(講談社)、「『平穏死』という選択」(幻冬舎ルネッサンス新書)、「『平穏死』を受け入れるレッスン」(誠文堂新光社)、「穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語」(さくら舎)など。

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2件 のコメント

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長ければいいというものではない

元原

ある程度の年齢にいったら、安楽死とまではいかなくても、本人の希望しない延命処置をやめるくらいはできてほしい。短命の時代が長かったからといって、長...

ある程度の年齢にいったら、安楽死とまではいかなくても、本人の希望しない延命処置をやめるくらいはできてほしい。短命の時代が長かったからといって、長寿を無理矢理喜ぶ必要はないのだから。

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ケンボウ

地方で救急隊長をやっています。石飛先生のご高説にとても共感しました。日々、多くの高齢者の方と接する中で傷病者本人はもとより、その家族、関係者皆さ...

地方で救急隊長をやっています。石飛先生のご高説にとても共感しました。日々、多くの高齢者の方と接する中で傷病者本人はもとより、その家族、関係者皆さんが納得できる救急活動をしていきたいと思っていますが、制度や基準との板挟みになることもしばしばです。だけど、人生の最終章は本当に安らかに過ごし、時が来れば静かに見送る。そんな世の中になれば良いなと感じます。

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