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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

コラム

命は奪わないけれどつらい、赤いブツブツ 帯状疱疹は予防の時代

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麻疹は死亡率0.1%の致死的感染症

 本稿執筆時点(2019年2月下旬)で、日本でまた 麻疹(はしか) が流行しています。またかー。もううんざり。

 さて、麻疹は「勝手に治る病気」だと勘違いしている方もいますが、さにあらず。死亡率0.1%の恐ろしい病気です。「なーんだ、0.1%なら大したことないじゃん」と思ったら、これも大間違い。麻疹は空気感染するので、バスや電車、街の中など人が集まる場所で爆発的に流行します。現在の日本での麻疹流行がそこまで悲惨じゃないのは、多くの人が予防接種を受けているおかげです。でも、まだ接種率が足りていないので、やはり流行は起こるのです。とにかく、繰り返しますが、麻疹は致死的な病気です!

死ぬことはない帯状疱疹 感覚神経に沿って発症

命は奪わないけれどつらい、赤いブツブツ 帯状疱疹は予防の時代

 麻疹と違って、人の命を奪わない感染症もあります。死ななきゃいいか、といえばそうではありません。例えば、今回紹介する帯状疱疹。「たいじょうほうしん」と呼びます。皮膚病はなぜか難しい漢字が並ぶ病名が多いのです。Wikipedia情報で恐縮ですが、帯状疱疹は「地方名」が多いのも特徴です。我が故郷の島根県では「胴まき」ということが多かったなあ。

 なぜ胴まきなのかというと、典型的な症状として、お (なか) のところに帯のような赤いブツブツがでるからなのです。大抵は右側か左側かのどっちかに出ます。実は胴だけではなく、胸とか顔とか体のあらゆるところに帯状疱疹は起きます。これ、実は人間の皮膚に走っている感覚神経に沿ってできる皮膚の病気なんです。感覚神経は、人間を細かく輪切りにしたように上から下に分布しています。背中にある「脊髄」から左右に皮膚に沿って神経が走っていて、その一つ(ときどき複数)に皮膚の病気が起きるんですね。

原因は水痘・帯状疱疹ウイルス 最近はワクチンが定期接種化

 で、この帯状疱疹はウイルスが原因です。ウイルスの名前は 水痘(すいとう) ・帯状疱疹ウイルス。いやーん、また長い名前。でも、よく見てください。これは「水痘」という病気と「帯状疱疹」という二つの病気を起こすウイルスという意味です。長い名前は分けて考えよ。困難は分割せよ(by デカルト)。

 水痘とはこれまた難しい名前ですが、要するに「みずぼうそう」のことです。赤ちゃんがなることが多い病気ですが、最近は水痘ワクチンが定期接種化されたので、この病気は日本で激減しました。水痘も空気感染するので、ワクチンを打たないと爆発的に流行しちゃうんです。

 子供のときに水痘ワクチンを打たなかった現在の日本の大人に何が起きるかというと、過去に感染した水痘・帯状疱疹ウイルスがじっとからだの中に残っているんですね。このように、人体内で死なずに共生している微生物は案外たくさんいるんです。水痘・帯状疱疹ウイルス(ここからは頭文字をとって、VZVと略します)も、そういう共生型のウイルスです。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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2件 のコメント

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潜伏感染の前始末と後始末とAIの活用

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

ウイルスや細菌の致死性って、何処がキーなんでしょうね? トリガーやバリアーの素因は今後も研究が進むでしょう。 学生時代には本文にある程度の知識も...

ウイルスや細菌の致死性って、何処がキーなんでしょうね?
トリガーやバリアーの素因は今後も研究が進むでしょう。

学生時代には本文にある程度の知識もアタマに有ったか怪しいものですが、画像診断を切り口に様々な勉強会でまれな疾患や斬新な考え方に触れると同じ知識や文章も違って見えます。

脳の画像診断の研究会ではしばしばVZV脳炎も出てきます。
検索をかけると、成人では極めてまれだが予後不良とあります。

潜伏感染はなかなかやっかいで、カンファレンスにかかるようなものは、患者さんが他にも様々な問題を抱えていることが多く、一般的ではないですが、皮疹や感染歴も含めて、効率的に処理できる診断プロトコルができていくといいですね。

進化するAIの力を借りるためという部分もありますが、細分化された臓器別専門科や症状別、遺伝子別などの領域を統合して運用するにあたって、一握りの天才に依存するようなシステムは良くないと思うからです。
(たとえ、どこかの天才がそのシステムを爆発的に前進させるとしても。)

そして、感染の被害はだいたい、ウイルスや細菌の量に依存する傾向があるので、早期に治療介入できるほどに予後良好ですからね。

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やはり専門医

niyankomam

皮膚の事は皮膚科って大事ですね 何度も繰り返し出てくるヘルペスに炎症と思い軟膏塗ってましたがあまりの痛みと治っては繰り返すので内科医の勧めで皮膚...

皮膚の事は皮膚科って大事ですね
何度も繰り返し出てくるヘルペスに炎症と思い軟膏塗ってましたがあまりの痛みと治っては繰り返すので内科医の勧めで皮膚科受診
ヘルペスと言われ坑ウイルスの軟膏ですぐ治りました
でも免疫抑制剤服用してるし免疫が落ちるとまた発症を繰り返してます
飲み薬とかで発症を抑えられるのなら楽ですね

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