文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

食べること 生きること~歯医者と地域と食支援 五島朋幸

医療・健康・介護のコラム

医師は口から食べるのを禁止、でも、大丈夫!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

自宅で食べる機能を再評価

 口から食べられるように回復した二つ目のポイントは、在宅の主治医が食べる機能の評価を僕に依頼してくれたことです。つまり、在宅で食べる機能の評価をすることができる医療者につないでくれたことがポイントなのです。本人から口から食べたいという希望を聞き、医療者の目で体調の回復度合いを判断し、病院での評価とは別に、在宅での再評価を行います。

 依頼を出してくれたクリニックと僕たちは古い付き合いで、在宅で「食べる」ことに問題があれば依頼を出してくれる関係です。この関係がなければ、いくら本人が食べたいと言ってもGOサインを出す人はいなかったでしょう。残念ながら、診療所に来られない方の自宅を訪問して、食べる機能を評価する仕事をする歯科医はまだ多くはありません。

多くの人は口から食べられる

 今回の女性の例でいえば、よほど体調がすぐれないときに検査を受けたのでしょう。その検査結果を受けて病院の主治医は絶対に食べてはいけないという指示を出しました。しかし、在宅に戻ってくると体調も良くなり、本人の食べる意欲も出てきました。そこで在宅主治医が僕に依頼してくださり、僕の方はどんどん口から食べる方向へかじを切ったということでした。

 飲み込む機能に障害があって、どうしても口から食べられない方もいます。しかし、多くの人たちが「医療者のリスク管理」という名のブレーキと厳しい指導で食べることをあきらめています。日々、訪問診療をしていると、患者さんへの病院の指導は時に「言葉の暴力」じゃないかと思うこともあります。そして在宅の現場で、食べる力の検査ができる人材が増えてほしいです。地域医療の大きな課題だと思います。(五島朋幸 歯科医師)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

20190205-tgoto-prof200

五島朋幸(ごとう・ともゆき)

歯科医師、ふれあい歯科ごとう代表(東京都新宿区)。日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授。新宿食支援研究会代表。ラジオ番組「ドクターごとうの熱血訪問クリニック」、「ドクターごとうの食べるlabo~たべらぼ~」パーソナリティーを務める。 著書は、「訪問歯科ドクターごとう1 歯医者が家にやって来る!?」(大隅書店)、「口腔ケア○と×」(中央法規出版)、「愛は自転車に乗って 歯医者とスルメと情熱と」(大隅書店)など

食べること 生きること~歯医者と地域と食支援 五島朋幸の一覧を見る

3件 のコメント

コメントを書く

医療者のためのリスク管理

初めてのリハビリ病院

回復期リハビリ病院に家族が入院し、「医療者のリスク管理」にぶち当たった。主治医は「誤嚥性肺炎リスクを避けるため」という理由で、嚥下リハビリを中止...

回復期リハビリ病院に家族が入院し、「医療者のリスク管理」にぶち当たった。主治医は「誤嚥性肺炎リスクを避けるため」という理由で、嚥下リハビリを中止させた。嚥下リハが困難であったとしても、廃用が進まないようそれに代わる何らかの指示やアドバイスを期待したが、「この病院ではやらない」「転院を検討してはどうか」と言われた。これは、「その医師自身のためのリスク管理」でしか無いと思う。「決められた入院期間中に責任をとらなければならないようなことはしない。」という意味でしか無いと感じる。回復期では治療をしないことは理解しているし、多くの病状の患者を担当することになるわけだから、患者にとっても医師にとってもリスクは少ない方が良いのは分かる。しかし、急性期を乗り越え、一縷の望みをもって「回復」や「専門」という言葉に期待して長期間入院することとなる患者や家族が、主治医の言葉に絶望するようなことが実際に起こっているのは残念である。

つづきを読む

違反報告

末期の水

ユキー

最期を迎える人に水を与える事を「末期の水」という。 (自覚があったのかは不明だが。) 当人が希望しているのに、拒否し、脅してまで飲ませない。 患...

最期を迎える人に水を与える事を「末期の水」という。
(自覚があったのかは不明だが。)
当人が希望しているのに、拒否し、脅してまで飲ませない。
患者の事より、自分がいかに死亡者を出していないかを考える医者の行動。
当時は神様にでもなった気の人が多かったんだな。
遺族にとっては心残りだったと思う。
同じ最期なら、飲んで満足して旅立って貰いたかったよね。

つづきを読む

違反報告

昔、入院中に

すなめり

若い頃、交通事故で入院をした。頭蓋骨を骨折していたので、そこそこ重症だった。 一緒の部屋に、あとから入院してきたお老婦人が、何日目かの深夜に容態...

若い頃、交通事故で入院をした。頭蓋骨を骨折していたので、そこそこ重症だった。
一緒の部屋に、あとから入院してきたお老婦人が、何日目かの深夜に容態が急変した。
婦人はしきりにΓのどが乾いたよ、お水が飲みたいよ」と付き添いの家族に訴えている。家族がそれを看護婦さんに伝えると、看護婦さんは医師に相談をしたらしい。
お医者サマが来て、家族に言った。
Γいま飲み物を与えると、誤咽を起こす可能性があります。また、水を飲んで安心感が生まれると、気持ちが緩んでこと切れることもあります。辛いでしょうが、我慢をしてもらって下さい。」
だが婦人は朝を迎えずに亡くなった。Γお水を飲ませておくれよ」と懇願しながら。

彼女の最期に水を飲ませてあげられなかった家族は、そのあとどうして日々を過ごしたんだろうかと、いまでも思う。

もう、35年も前の出来事ですが。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事