しあわせの歯科医療
医療・健康・介護のコラム
新潟県の子どもはなぜ、虫歯が少ない?
子どもの虫歯は減ってきた
喜ばしいことに子どもの虫歯はぐんぐん減ってきました。最も多かった1970年代には12歳で平均5本、ほぼ90%に虫歯があったのが、今や平均0.82本(2017年度)、虫歯がある12歳児の割合は35%ですから素晴らしい変化です。歯科についての知識の普及や食生活の変化などが減少の理由とされています。筆者は最も虫歯が多かった時代に12歳だった“虫歯大発生世代”ですが、思えば、「乳歯は抜けるから歯なんて磨かなくても大丈夫」と間違ったことを言う大人が周りにいたし、甘い駄菓子にジュースやアイスもだらだらと取っていました。
都道府県の虫歯格差は、所得格差の影響大
永久歯がほぼ生えそろう12歳児の虫歯の状況は、全体では良くなってきているのですが、都道府県レベルで見ると、大きな地域格差があります=図1=。愛知や新潟の平均虫歯本数は0.4本に対して、沖縄や北海道はその約4倍。虫歯がある子どもの割合は新潟、愛知はほぼ5人に1人ですが、沖縄や鹿児島ではほぼ2人に1人です。都道府県という大きな単位で見てもこれだけの差があります。
大雑把に見ると、北海道、東北、九州は虫歯が多く、東海道、山陽新幹線沿線は少ない傾向があるようです。

学校保健統計調査(2017年度)より

日本小児歯科学会理事長で神奈川歯科大教授の木本茂成さん=写真=に地域間格差の理由を尋ねると、「所得の差の影響が大きいようです。社会経済的状況と親の歯科衛生の知識や習慣に一定の相関関係があることが様々な研究からわかっています」。
そのうえで、都道府県の平均賃金のグラフ=図2=を示してくれました。都道府県名の青字は、12歳児で虫歯を持つ割合が少ないベスト10、赤字はワースト10。ベスト10の6県は左側の賃金水準の上位にあります。一方、悪い方は、おおむねグラフの右側に分散しています。賃金トップの東京は様々な人がいるためか、トップグループには入っていません。賃金水準と虫歯の保有率がピタリと一致するわけではありませんが、確かに全体の傾向は木本さんの指摘の通りです。

賃金構造基本統計調査(2017年)と学校保健統計調査(2017年度)より
12歳平均虫歯数の少なさ18年連続日本一、なぜ新潟が?
ここで注目したいのが、賃金水準が高くないのに虫歯が少ない新潟県。賃金水準は33位ですが、12歳の子どもの虫歯数の少なさでは、2000年から18年連続トップです。

「新潟県の子どもはどうして虫歯が少ないんですか」と筆者が質問したのは、たまたま別のテーマでインタビューをしていた新潟大学歯学部教授(予防歯科)の 葭原 明弘さん=写真=です。本題の取材が一段落して切り出すと、「よくぞ聞いてくれました。新潟には四つの自慢の『白』がありまして、お米、雪、美人、それに歯」と、それまで冷静な研究者の顔をしていたのが一転、新潟の予防歯科について熱く語り始めました。実は新潟大の予防歯科は、子どもの虫歯予防に大きな役割を果たしてきたのです。
話は、虫歯が爆発的に増えていた50年近く前に遡ります。新潟市と接する弥彦村の弥彦小学校で1970年、「虫歯は治療だけでは不十分、予防が大切」という新潟大学の指導を受け、週1回、フッ素入りの水でのうがいが始まりました。その後、PTAの要望で保健室に付属歯科治療室が設置されます。フッ素洗口を行いながら歯科の教育、治療を展開することで、弥彦村の子どもの虫歯の減少に大きな成果を上げていったそうです。
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予防治療も・・
みい
虫歯爆発世代の後ぐらいの世代は、虫歯のなりかけでも削って詰めていた ような気がする。、それも、虫歯と換算されてしまうのか、が永遠の疑問。
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格差社会進行時における予防医療の意味
寺田次郎 フメイヨークリニック院長予定
フッ素利用は賛否両論があって、それを記載されているのが良いと思います。 ワクチンも、抗生剤もそうですが、体にいいものとされるものや行為でも細分化...
フッ素利用は賛否両論があって、それを記載されているのが良いと思います。
ワクチンも、抗生剤もそうですが、体にいいものとされるものや行為でも細分化して考えるとその限りでないことがよくあります。
そういう意味でも、歯の健康に関心が大きいというのが一番のポイントなのかもしれないですね。
所得格差は食事や間食の違いだけでなく、知識や生活習慣の違いを生み出す土壌ですが、虫歯は虫歯のみならず、感染性心内膜炎など身体疾患の原因にもなりますので、予防歯科に関する取り組みの財源の確保も含めて色々と議論が必要そうですね。
虫歯は確かに良くないですが、程加減を弁えた間食は心身の健康に良いものです。
財布と健康に悪いものほど美味しいと言いますが、そういうリテラシーまで含めて予防教育が進むといいです。
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