文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

「教えて!ドクター」の健康子育て塾

医療・健康・介護のコラム

おねしょの悩み(下)治療は小学1年生頃から、薬やアラーム使用…叱らずほめて治そう

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

治療で2年早く「解放」!?

 さて、夜尿には、いつ、どんな治療をすればいいのでしょうか。

 治療は基本的に、小学校1年生(6~7歳)から開始します。ですから、受診の目安もそのあたりになります。自然には年に約15%とされている治癒率を、治療することで50%にまで高めることができるといわれています。治療の結果、夜尿から解放されるのを2年以上早めることができるという報告もあります。

 受診のきっかけで多いのは、宿泊行事です。ただし診断して治療方法を決めたり、薬が効くかを判断するには時間が必要です。そもそも、治療してすぐ治るわけではありません。少なくとも行事の3か月前、できれば6か月以上前に受診していただくのがよいと思います。

「夜更かしさせない」「起こしてトイレに行かせない」

 夜尿の95%以上には、原因となる病気がありません。逆に言えば、5%以下ではありますが、病気が隠れていることがあります。例えば、糖尿病や尿崩症、腎臓や尿路の病気、発達の問題、睡眠時無呼吸症候群などです。また、便秘が夜尿の原因になっているケースもあります。そのため、医療機関に相談し、これらの病気が隠れていないかをチェックすることが、夜尿の治療の第一歩になります。

 その上で、まずは生活指導を行います。指導で保護者にお伝えするのは以下のようなことです。

  • 夜尿はお子さんの過失ではなく、罰を与えても効果はありません。
  • 家族に排尿の記録をつけてもらいます(夜尿のおむつの重さ、朝のおしっこの量)。
  • 「基本的にほめる姿勢で」と伝えます。具体的には、夜尿しなかったらほめる、夜尿しても、自分で対策ができていれば(例えば、夜の水分制限ができたなど)、それをほめます。
  • 昼間のうちに十分水分を取っておき、夕方以降の水分を制限します。

 水を飲むと、約2~3時間で尿として出ます。したがって夕食は眠りに就く2時間以上前に済ませます。それ以降の飲水を制限(夕食時はコップ1杯くらい。利尿作用のあるカフェインを含まないお茶か水。尿が多くなりやすい牛乳・みそ汁・スープも夕食時には避ける)。どうしてものどが渇く場合は、氷を口に含むと少量の水分でのどの渇きが癒やされやすいです。

  • 就寝前にトイレに行く習慣をつけます。
  • 夜更かしをさせないようにします。
  • 夜起こしてトイレに行かせません。

 夜の睡眠を妨げることは体の代謝サイクルなどに影響を与えます。また、夜尿を改善する効果もないとされています。

  • 睡眠中の冷え対策(暖かい服を着たり、靴下をはいて寝るなど)を。

再発率低いアラーム療法

 夜尿の生活指導を行っても改善しない場合には、薬物療法とアラーム療法、もしくは両方を行います。どちらの治療を行うかは医師とご相談ください。

 薬物療法には、まずデスモプレシンという薬を使います。以前は、スプレーの製剤が中心でしたが、最近は内服薬があります。この治療法単独での改善率は約7割、治癒率は約3割といわれています。難点は、薬を減量したり、中止したりすると、再発率が高いことです(6~7割)。このほか、いくつかの薬を使うことがあります。

 アラーム療法は、寝ているときに尿が出るとセンサーが作動し、音や振動などのアラームで本人を起こし、トイレに行くようにします。これを毎日続けることで、夜尿しないようになります。約7割と治癒率は高く、しかも再発率が15%と低いため、ガイドラインでも一番推奨されています。夜尿に効くしくみは、はっきりと分かっていませんが、寝ている間に 膀胱(ぼうこう) で尿をためる量が増えるためと考えられています。

 この治療では、最初は本人が起きないことも結構あり、家族が助ける必要があります。そのため、家族に負担感があり、ドロップアウト率が30~60%と高いのが難点です。また、現状では保険適用外のため、お金もかかります。

 夜尿の正しい理解を広めることで、少しでも悩むお子さんが減ることを願っています。(坂本昌彦 小児科医)

参考文献:
  1. 日本夜尿症学会(編):夜尿症診療ガイドライン2016.診断と治療社.1-117,2016
  2. 赤司俊二:長期治療解析例による初診時臨床所見スコアー化の試みと治療予後の推定.夜尿症研究14:29-34,2009

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

20190204-msakamoto-prof200

坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

「教えて!ドクター」の健康子育て塾の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

発生学と発達科学の一般社会常識との乖離

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

本文を読むとわかるのは、夜尿症の問題は子供だけではなく、半分以上は保護者や教師の認知や教育の問題ということです。 僕も面倒ごとは苦手ですし、子供...

本文を読むとわかるのは、夜尿症の問題は子供だけではなく、半分以上は保護者や教師の認知や教育の問題ということです。
僕も面倒ごとは苦手ですし、子供がいたこともないのに、自分ならできるとか主張する気もありませんが、学ぶ機会が重要なのではないかと思います。
泣かない、おねしょしない赤ん坊はいません。
それは、結局、胎生期から小児を経て、大人になっていく過程のものです。

赤ん坊が泣くのは肺などのトレーニングとも言いますし、赤ん坊の尿量減少疾患からの肺の発育不全はよく知られています。
結局、羊水という疑似海水の中で育ち、地上に出て、地上生活や現代生活に適応していくにあたって、様々なつまづきとその後の適応や成長があるに過ぎません。

大人は、自分たちもそのステップを踏んできたにも関わらず、平気で子供たちに大人の都合とルールを強要してしまいがちです。
人間は金太郎飴ではないので、成長の個体差も不機嫌や不理解もあります。
また、一学年には誕生日の差が一年ほどあります。
だからこそ、大人たちが頭の余裕、心の余裕をもって対応できる仕組みが必要ですね。
働き方改革は優しさを持てる個人を増やす改革でもあると思います。

責任を取ることを、ケツを持つ、ケツを拭くと言いますが、それは必ずしもマイナスのことでしょうか?
実はそういう部分からの考え方こそが、解決の糸口なのかもしれません。

いつでも、不始末に優しくできるわけでもないでしょう。
でも、デコピンとか、罰ゲームとか、愛情と罰がセットで与えられる親御さんが増えるといいですね。
愛情をもって、成長を促すために怒るのも結構エネルギーが要ります。

最近、大学の後輩にサッカーを教えながら痛感します。
それでも、気に入らないから無視とかより、人間的でいいです。
どこかの「医は算術」「都合の悪い情報は無視」大学へのイヤミではありませんが。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事