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「教えて!ドクター」の健康子育て塾

医療・健康・介護のコラム

おねしょの悩み(上)「クラブ合宿」「修学旅行」どうしよう…心配しないで、「うちの子だけ」ではありません!

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低学年で10%、5年生でも5%

 夜尿の有症率(症状のある子の割合)は、5~6歳時点で20%、小学校低学年で約10%。小学校5年生では5%くらい(クラスに2~4人)といわれています。小学校卒業時点でも約30~50人に1人(だいたいクラスに1人)はいます。

 食物アレルギーや喘息ぜんそくの子の割合と比較してみましょう。食物アレルギーの有症率は乳児で約10%。3歳児で約5%、学童期以降で1.3~4.5%。喘息の有症率は、6~7歳で13.8%、13~14歳で8.3%です。喘息や食物アレルギーのお子さんが、同じクラスにいるのはイメージできますよね。夜尿もそれと同じです。

 小学校5年生では、「うちの子以外に夜尿をしている子はいない」と思い悩む保護者が多いかもしれません。でも、実際にはクラスに2~4人くらいいるのです。ご安心ください。「うちの子だけ」ではないのです。

避けたい自尊心の低下 治療で改善を

 とはいえ、夜尿が続くことは子どもの自尊心を低下させ、精神的なトラウマの原因になるといわれています。その割合は、なんと、学校のいじめや仲間外れよりも多かったというオランダの報告すらあります。夜尿が精神的な負担になっているお子さんがいることを、私たち大人は知っておく必要があります。治療をせず、自然に改善する割合は、年間10~15%。しかし、治療をすれば、その割合はぐっと高まり、本人や家族の生活の質を改善することができます。

 このような理由から、今は積極的に夜尿を治す時代です。本人やご家族が、夜尿のことで悩んでいらっしゃるなら、ぜひ医師にご相談ください。(つづく)(坂本昌彦 小児科医)

参考文献:
  1. 日本夜尿症学会(編):夜尿症診療ガイドライン2016.診断と治療社.1-117,2016
  2. 内藤泰行:夜尿症の疫学と予後(「小児科診療」診断と治療社)80:911-914,2017
  3. 厚生労働科学研究班:食物アレルギーの診療の手引き2014
  4. 小児気管支喘息・アレルギー性鼻炎調査グループ.全国小・中学生アレルギー疾患調査 アレルギー疾患対策に必要とされる疫学調査と疫学データベース作成に関わる研究.厚生労働科学研究費補助金,平成28年度総括研究報告書:13-5,2017
  5. Van Tijen NM, Messer AP, Namdar Z: Perceived stress of nocturnal enuresis in childhood. Br J Urol 81(Suppl.3):98-99,1998

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坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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1件 のコメント

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画像診断と生活習慣から考える夜尿症

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

他科の先生の、日本の基準や世界の基準というのは新鮮ですね。 こういう細かい基準は僕は苦手です。 自分は画像診断が基準にありますから、物理的異常=...

他科の先生の、日本の基準や世界の基準というのは新鮮ですね。
こういう細かい基準は僕は苦手です。

自分は画像診断が基準にありますから、物理的異常=先天的異常がないか、機能的異常=発達や生活習慣、精神面に問題がないか考えてしまいます。
目に見える画像の変化、はっきりとしないけれど問診と併せ持ってより高度の検査を行えば検出が疑われる画像の変化、画像上明らかに異常がなく、むしろ、生活や精神面の問題があるケース。
(子供の尿というのは、癇癪やマーキングなどの自己主張の側面もありますので、大人の常識だけで考えないのが大事だと思います。)

本文を知らずに、患児を診るのであれば、食べ物や飲み物の好みや量などを問診しながら、技師さんに超音波で尿路を観察してもらうと思います。
CTやMRIは高額であったり、放射線被ばくがありますから、よほど重症でなければ、検査が経過観察より重要とは言い切れないからです。

他の疾患もそうですが、恥ずかしい、と言うことが診断や治療の遅れになることはよく知られるべきだと思います。
女性の膀胱炎の多さも、外でトイレに行きたくない心理の産物であることが多く、治療は抗菌薬よりも適時飲水が有効ですよね。
こういう心と体の問題の交差点は意識や常識の塗り替えの問題も絡んで難しいものです。

大学の生理学の授業で言われました。
「おしっこは血液より安全」
確かに感染の観点で言えばそうなのですが、一般の常識と感覚ではないのですよね。

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