産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
北川景子演じる「家売るオンナ」主人公・三軒家万智の心の傷
「私に売れない家はない!」
登場人物のキャラクターや人間関係などから様々なことが読み取れるテレビドラマは、心理分析の格好の材料です。そして、最近目立つのが 颯爽 とハタラク女性が活躍するドラマ。というわけで、今回からしばらく、女性を主人公にしたドラマを見ていきたいと思います。
まずは、2016年スタートの「家売るオンナ」、17年5月の「帰ってきた家売るオンナ」の続編となる「家売るオンナの逆襲」(日本テレビ系)。女優の北川景子演じる主人公のサンチーこと三軒家万智は不動産会社の営業ウーマン、「私に売れない家はない!」の決め 台詞 で人生最大の買い物である不動産を売りまくります(図1をご覧ください)。
抜群の成績をあげる営業手法は、顧客の生い立ちや人生観、将来の夢などを徹底分析し、顧客が最も喜ぶ特徴を備えたり、付加価値を加えたりして「一味違う物件」にして提案するものです。その実現のために文字通り、寝食も忘れて奮闘します。
提案物件は、どれも顧客自身が思いもつかなかったような、深層心理を 汲 み取ったもので、三軒家の意図を聞いた顧客は、その考え抜かれた提案に感動し、購入を即決します。営業の極意は、顧客の心理を読み取ることであると教えてくれます。決め台詞通りに結果を出す。その有言実行ぶりは、見る者の心をスカッとさせます。
三軒家万智の受けた心の傷は
三軒家は営業成績抜群、美貌の30歳。めったに自分の感情をあらわさない無表情、無駄な会話もしない特異なキャラクターですが、それには彼女の 辛 い過去が影響していると考えられます。
ドラマで明らかになったのは、両親の事故死と父の5000万円の借金返済、誰もサポートしてくれず家を追い出されたという辛い過去。おそらく、強烈なショックから「心的外傷後ストレス障害(PTSD、Post Traumatic Stress Disorder)」に苦しんだことをうかがわせます。
厚生労働省のサイトによると、PTSDは、「とても怖い思いをした記憶がこころの傷となり、そのことが何度も思い出されて、恐怖を感じ続ける病気」。その引き金となる出来事が「心的外傷体験」です(一般的にはトラウマという言葉がよく使われます)。
図2を見てください。心的外傷体験は、ふだんは意識に上る(思い出す)と辛いので、心の深層である「無意識の世界」に閉じ込めておきます。それは辛い体験から自分の心を守るための行為です(専門用語では、閉じ込めることを「抑圧」、心を守るための行為を「防衛機制」といいます)。
前出の厚労省サイトでは、PTSDのサイン・症状を以下のようにあげています。
1)突然、つらい記憶がよみがえる
2)常に神経が張りつめている
3)記憶を呼び起こす状況や場面を避ける
4)感覚が 麻痺 する
5)いつまでも症状が続く
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