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[フォーラム「がんと生きる~こころとからだ 私らしく~」](下)患者支援 様々な試み

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不安やイライラ 死生観の悩みも

[フォーラム「がんと生きる~こころとからだ 私らしく~」](下)患者支援 様々な試み

賢見卓也さん

  町永  がんになると、様々な悩みや不安を抱きます。がんに伴う「トータルペイン(全人的苦痛)」は、どういったものですか。

  賢見  身体的苦痛以外にもいろいろなつらさを感じます。精神的苦痛は、不安やイライラ、 うつ のような気分。社会的苦痛は、家族や職場の問題、経済的な問題を意味します。スピリチュアルな苦痛は、海外では宗教的な意味合いがあるのですが、日本人だと、申し訳ないという気持ちや生きている意味を考えるような悩み、苦しみが適当でしょうか。

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  町永  がん医療では、就労の問題なども含め、様々な側面への対応が求められます。

  丸山  医療者からの支援だけでなく、患者会やピアサポート(仲間による支援)の存在に、患者を支えられる部分もあると思います。

制度利用 専門家と考える

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延浩子さん

  町永  治療を続けていくための経済的負担は大きいですか。

  横山  退院して仕事に復帰しましたが、がんであることを理由に、配置転換になり、降格させられました。年収は200万円ほど減り、生活は苦しくなりました。治療費、生活費、子供の養育費と、出ていく金額は変わらないのに収入は減り、「あと何か月で貯蓄が底をつくのか」と思うと、とても怖かった。でも会社から圧力もあり、退社せざるを得ませんでした。

  賢見  がんになると、多くの人が収入が減ります。一方、医療費はかかります。貯蓄や遊興費に回す部分はなくなります。貯金を取り崩しながら生活していける人もいますが、治療期間が長くなると、「1年後、2年後は?」と不安が大きくなります。

  町永  全国のがん診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」は、経済的な問題も含めて、患者の相談に応じる窓口です。

  賢見  看護師やソーシャルワーカーなど、専門家が常駐しており、がんのことなら何でも無料で相談できます。

働けない時 傷病手当金

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白水千穂さん

  町永  経済的な支援として、傷病手当金という制度があります。

  賢見  治療で働けなくなった場合に、所得を保障します。また、家族が利用できる制度もあります。家族が介護のために仕事を休んだ場合、介護休業給付金が雇用保険から支給されます。ただ、どちらの制度もあまり知られていません。

 がんと暮らしを考える会では、がん患者が活用できる制度を簡単に調べられるウェブサイト「がん制度ドック」(http://www.ganseido.com/)を作りました。サイトにアクセスし、22項目の質問に回答すると、利用できる可能性がある制度を見つけることができます。

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コーディネーター 町永俊雄さん

  町永  行政の立場からはどう感じますか。

  丸山  きめ細かに対応しようとすると、制度は複雑になってしまいがちです。ワンストップで必要な人へ届けるといった民間の取り組みは非常に心強いです。

  町永  社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなど、金融の知識のある専門家の存在も重要です。

  賢見  どんな制度があり、患者の家族も含めてこれからどのぐらいの収支で生活できるのか、そういった相談ができます。

  横山  制度の利用の仕方を一緒に考えてくれる人がいるのは、本当にいいことだなと思います。

家族でしっかり話し合う

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展示物に見入る来場者

  町永  がんと向き合っていくには、家族の支えも大きい。家族を亡くした悲しみから抜け出すには、時間がかかりましたか。

   普段は元気に働いているんですが、夫が亡くなって2年ほどは仏壇に向かって、「早く迎えに来て」と泣く日々が続きました。三回忌が終わり、ようやく前を向いて歩けそうな気持ちになりました。家族を亡くした経験のある人は、よく理解してくれました。

  横山  闘病中、家族に伝えられないこともありました。患者と家族の集まりで、ほかの家族の話を聞き、そういった思いをしているのは自分だけではないと気づきました。

  町永  一番身近で支えてくれる家族に心配させまいと、我慢してしまうこともありますよね。

  賢見  治療が進むと、患者本人だけで決断できることばかりではなくなります。家族と一緒に話し合う場面が出てきます。これからどう過ごしたいか、家族は自分をどう思っているか、子供にはどう育ってもらいたいか。表面的な会話で終わらないよう、医師から言われたことを踏まえて、家族でしっかり話し合って決めていくことが本当に大事だと思います。

  丸山  がん相談支援センターは誰でも相談できるのですが、行くのを 躊躇ちゅうちょ する人もいると思います。例えば、がん患者の会や家族会に話を聞いてもらう選択肢もあります。自分に合うやり方で、治療の進め方や支援の活用の仕方を見つけていくのがいいでしょう。

「がんは患者の全部ではない」

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熱心に聞く参加者

  町永  様々な課題とどう向き合っていけばいいでしょうか。

   がんの治療は、驚くほど進歩しています。がん相談支援センターなど、支援も整備されてきたと思います。いろいろな立場の人が、よいチームワークで患者と家族を支えていくのが大切です。

  白水  がんは私の一部であって、全部ではありません。がんに取り込まれず、できるだけ楽しく、有意義に過ごしていけたらいいなと思います。

  丸山  がんと診断される人は年間延べ約100万人。家族を含めれば、もっと多くの人ががんの問題に関わっています。一人ひとりに寄り添った、多様な支援が必要だと思います。

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