エッセイスト 安藤和津さん
一病息災
[エッセイスト 安藤和津さん]介護うつ(4)孫の世話きっかけに回復
介護が終わっても、感情は平板なまま。その時に思った。「年を取って感情の起伏がなくなったのね」。年のせいでないことに気づいたのは、うつ状態を抜けた2017年の終わり頃だ。
テレビで見ていたお笑い番組に「アハハ」と自然に笑いが漏れた。それまでは周りに合わせて楽しいふりをしていたのに。灰色のサングラスが外れ、目の前に色が現れた。居座っていた抑うつ感はこんなふうに抜けた。どうして変われたのだろう。
介護に燃え尽きた時には、気づくと夫も娘も外で活躍し、自分だけが取り残された感じがした。一方、回復の年には、長女に続き、次女のさくらさんが出産し孫2人の「ばあば」になった。家に来れば食事にオムツにと面倒をみる。世話をするうちに、灰色の世界に幸せな色が塗り重ねられていくのを感じた。孫の世話がきっかけになったと思う。
うつが抜けると仕事にも意欲的になり、以前から頼まれていた書籍用の原稿にも取り掛かった。昨年秋には「“介護後”うつ」として出版。頑張り過ぎピリピリしていた自分の介護を振り返り、反省を込めて書いた。
「100%を目指さず、プロの手も借りながら、笑顔で出来る範囲の介護が、介護される側の心が最も安らぐ形なのでは」。介護うつに陥らないコツにもなりそうだ。
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エッセイスト 安藤 和津 さん(70)
(文・渡辺勝敏、写真・安斎晃)
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