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石飛幸三の『人生の最期をどう迎えるか』

医療・健康・介護のコラム

人ごとではなくなった最期の迎え方 とにかく延命か、生きる意味か

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延命治療をしないと殺人? 明治時代のままの刑法

 私は約半世紀、外科の医者として働いてきました。いわば「体の部品修理屋」でした。「なに! 手術を受けない? 命を粗末にするんじゃない」と、救急外来で患者さんに医療を押し付けてきました。まだ人生の先がある人には、それは正しいことだったでしょう。

 しかし、もう最終章の人が残った人生をどう生きるか、それはその人の考えです。とにかく、命を延ばしたい人もいます。一方で、生きることの意味を重視する人もいます。

 しかし、わが国では、延命治療をしないと不作為の殺人罪に問われはしないかと思っている人がいます。そんな人がまだいるのか、と思われるかもしれませんが、明治時代に作られた刑法がそのままにされているのです(刑法218条、219条※)。だから、医療者側には、命を延ばす方法があるのに、それをしないと責任を問われはしないかと思っている人がいます。家族のなかにも、命を伸ばす方法があるのにしないと、責められはしないだろうかと思っている方がいるのです。

 今、83歳。後期高齢者の一人でもある私が、どんなことを考えているか。10回ほどに分けて、お話できればと思っています。(石飛幸三 特別養護老人ホーム常勤医)

刑法218条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

刑法219条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

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石飛幸三(いしとび・こうぞう)
 1935年、広島県生まれ。慶応大学医学部卒。ドイツのフェルディナント・ザウアーブルッフ記念病院、東京都済生会中央病院で血管外科医として勤務。プロ野球投手の手術も多く手がけた。2005年12月より、世田谷区立特別養護老人ホーム・芦花ホーム常勤医。10年に「平穏死」を提唱し、反響を呼ぶ。著書に「『平穏死』のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか」(講談社)、「『平穏死』という選択」(幻冬舎ルネッサンス新書)、「『平穏死』を受け入れるレッスン」(誠文堂新光社)、「穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語」(さくら舎)など。

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