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石飛幸三の『人生の最期をどう迎えるか』

コラム

人ごとではなくなった最期の迎え方 とにかく延命か、生きる意味か

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超高齢社会の日本 人生の最終章にどこまで医療を?

人ごとではなくなった最期の迎え方 とにかく延命か、生きる意味か

 高齢者が最終章を迎えた時、どこまで医療を施すのか、多くの人が考えるようになりました。日本は、世界で有数の超高齢社会。ほとんどの人にとって、それは人ごとではいられなくなっているからです。

 人生の最期の迎え方は、その時代の文化を示すと言われています。病気の治療法がいくら発達しても、自然の摂理によって、人間はいつまでも生きられるわけではありません。それなのに、どこまでも延命治療を押し付けてしまうと、かえって苦しめてしまうことになります。

 しかし、いざとなると慌てるのも人間です。救急車を呼んでしまうのです。でも最近は、「もう何もしないでください」と治療を断わる家族が増えています。確かに、医療によって命の時間は引き延ばせるかもしれませんが、「こんな惨めな思いをするなら、早くおしまいにしたい」と思っている本人や家族も少なくないのです。

 貧しくて医療費が払えなかったり、食べ物がなくて餓死したり、多くの若者が結核で 夭折(ようせつ) したりしていた時代には、一度きりの人生、誰もが自然な最期を迎えるまで生きたいと願っていました。しかし、今では、多くの高齢者がそこまで生きることができるようになり、そろそろ店じまいをしようと考えているのです。

 人生を頑張って生きてきて、還暦まで来た。2周目に入った。これからはゆっくり過ごそう、そう思っていた矢先にやって来る、あの嫌な脳梗塞。突然の奈落です。そのうえ、がんでも死ねない、心筋梗塞でも死ねない、思うように体が動かない、しゃべれない。それならいっそ、あの世に逝きたい……。

 「おしん」などの原作者、橋田寿賀子さんは、大型船での世界周遊が趣味だそうですが、月刊誌「文芸春秋」(2016年12月号)に「認知症になったら『安楽死』したい。それができるスイスに行きたい」と書いて、大騒動になりました。

特別養護老人ホームは介護地獄からの駆け込み寺

 核家族化した現代の家庭で、数少ない家族が、認知症の親や配偶者を24時間介護することは、実際には介護地獄になります。このような方の駆け込み寺が特別養護老人ホームです。入所されて1か月後、入所者は髪がきれいに整えられ、体調も落ち着いてホッとされ、土曜日の昼下がり、久しぶりに家族と一緒にお茶を飲んでおられる姿を見ると、つくづくホームは役に立っているなあ、これこそ社会的な使命を果たしている組織だなと思います。

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石飛幸三(いしとび・こうぞう)
 1935年、広島県生まれ。慶応大学医学部卒。ドイツのフェルディナント・ザウアーブルッフ記念病院、東京都済生会中央病院で血管外科医として勤務。プロ野球投手の手術も多く手がけた。2005年12月より、世田谷区立特別養護老人ホーム・芦花ホーム常勤医。10年に「平穏死」を提唱し、反響を呼ぶ。著書に「『平穏死』のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか」(講談社)、「『平穏死』という選択」(幻冬舎ルネッサンス新書)、「『平穏死』を受け入れるレッスン」(誠文堂新光社)、「穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語」(さくら舎)など。

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