心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
電子カルテ化の意義 何よりも患者のために
医師の思考過程が見えにくい……
先日、ある眼科疾患で長年通院している患者が、「電子化されましたね」と、当院が電子化されたのを見て、自分の体験について語りました。
総合病院で、数年前に電子カルテ化された時点で新たに出された糖尿病の薬が、実は不適切なものだったという話です。そこでは、担当医師がしょっちゅう変わるとのことですが、何十年か前に胃の摘出手術を受けていたために食後高血糖があったことが、電子カルテ化の時に手術の情報が抜け落ち、通常の糖尿病と誤認されたのでした。医師の指示通りに薬を服用していたところ、その後、何度か低血糖症状が出て不適切がわかったそうです。本人は、「電子カルテによる、医療過誤ですよね」とおおらかに笑っておられましたが、ゆゆしき出来事です。
紙カルテなら、強調すべき内容を示す個性ある医師の記載やマーク付けなどにより、その医師の思考過程が伝わりますが、電子カルテではそういう人間の意思は見えにくいものです。
電子カルテ化は、それが医療経済性や、病院の効率化のためではなく、何よりも患者のための成果でなくてはいけないことを改めて考えさせる話ではありました。
(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
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