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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

電子カルテ化の意義 何よりも患者のために

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医師の思考過程が見えにくい……

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 先日、ある眼科疾患で長年通院している患者が、「電子化されましたね」と、当院が電子化されたのを見て、自分の体験について語りました。

 総合病院で、数年前に電子カルテ化された時点で新たに出された糖尿病の薬が、実は不適切なものだったという話です。そこでは、担当医師がしょっちゅう変わるとのことですが、何十年か前に胃の摘出手術を受けていたために食後高血糖があったことが、電子カルテ化の時に手術の情報が抜け落ち、通常の糖尿病と誤認されたのでした。医師の指示通りに薬を服用していたところ、その後、何度か低血糖症状が出て不適切がわかったそうです。本人は、「電子カルテによる、医療過誤ですよね」とおおらかに笑っておられましたが、ゆゆしき出来事です。

 紙カルテなら、強調すべき内容を示す個性ある医師の記載やマーク付けなどにより、その医師の思考過程が伝わりますが、電子カルテではそういう人間の意思は見えにくいものです。

 電子カルテ化は、それが医療経済性や、病院の効率化のためではなく、何よりも患者のための成果でなくてはいけないことを改めて考えさせる話ではありました。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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