大人の健康を考える「大人び」
医療・健康・介護のコラム
患者力(6)術後の病室 体を点検
このシリーズでは、元和歌山市医師会長で、田中内科医院(和歌山市)院長の田中章慈さん(71)に聞きます。(米井吾一)
肺がんの手術が無事に終わり、病室に戻ってきました。意識が回復してきたら、患者としての「仕事」のスタートです。
まず、自分の体を点検しました。口や鼻を覆う酸素マスクのほか、栄養や鎮痛薬の注入、血圧や尿量の測定、肺からの出血の吸引、血栓(血の塊)ができるのを防ぐ装置などの合計12本ものチューブやコードなどが体中に付いていて自由がききません。
こうしたチューブについては、「ちょっとでも動かしたらあかんもんや」と思っていませんか? 「触るのが怖い」という声もよく聞きます。でも、人間の体はずっと同じ姿勢でいたら、しんどいものです。寝ている時でも無意識に寝返りを打つでしょう。それを妨げるのがこうしたチューブです。
実際には動かしていいものもあるので、最初のうちに看護師さんに教わることが大事です。一本一本のチューブがどんな目的で付いているのかを聞いておくことで、患者も全身の状態を把握できるし、もしアクシデントが起きても早めの対処ができるはずです。
私の場合、点滴用の静脈ルートの位置については手首や肘の関節にかからないよう、手術前に看護師さんと一緒に場所を決めておきました。これだけでもずいぶん体が楽になりました。
右手には、痛みがひどくなった時に追加の鎮痛薬を送り込むためのレスキューボタンが握らされていました。後日、退院時に看護師さんに聞くと、薬の使用量は普通の人に比べて極めて少なかったとのことでした。体の負担を軽減する体勢や呼吸が自然にできていたのでしょう。
【略歴】
田中 章慈(たなか しょうじ)
1973年、和歌山県立医科大学卒。同大学助手を経て、和歌山赤十字病院第二内科副部長。85年、田中内科医院開設。2008年から13年まで、和歌山市医師会会長を務めた。日本臨床内科医会理事。
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