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コラム

「穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語」 石飛幸三著

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 「平穏死」という言葉を世に送り出して、終末期医療や 看取(みと) りのあり方に一石を投じた著者の集大成。外科医として約半世紀も医療の最前線にいた著者が、2005年に特別養護老人ホーム「芦花ホーム」(東京都世田谷区)の常勤医になり、「終の住処」づくりに取り組む中で、死に対する見方がどう変わっていったのか、その足取りが丁寧につづられている。

 反響を呼んだ「『平穏死』のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか」(講談社)を10年に出版後、全国からの講演依頼は700回近いという。今では、終末期の過剰な水分・栄養補給の問題点や、介護施設での看取りの実現など、著者の訴えは広く理解されるようになり、同様な取り組みが増えている。

 ただ、芦花ホームでも当初、従来のやり方を変えるのは容易ではなく、病院で「胃ろう」を拒否した入所者を著者が連れ帰ったところ、「いったい誰が食べさせるんだ」と介護士に反発されたこともあった。それでも実際に、枯れるような穏やかな看取り「平穏死」を経験していく中で、スタッフが同じ価値観を共有し、仕事にやりがいを持てるようになり、ホームを辞める人も少なくなっていったという。

 終章では「『平穏死』に至る原点」として、外科医時代に治せなかった患者との交流や、本人の意思に反して父親に延命処置をしてしまった自らの苦い思い出なども紹介している。(さくら舎 1400円税別)

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