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その医療 ホントに要りますか?

コラム

[最終回]効果が認められる乳がん検診だが…「必要のない手術」に至る可能性も

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 前回は、効果が不確かなうえマイナスの面が大きい前立腺がん検診について考えました。ただ、効果があるとされている乳がん検診などにも、見過ごせないデメリットがあります。

死亡の危険度は19%低下

 

[最終回]効果が認められる乳がん検診だが…「必要のない手術」に至る可能性も

 厚生労働省は、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮 (けい) がんの5種類のがんについて、自治体が検診を行うよう指針を定めており、受診を推奨しています。

 このうち、乳がんには、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)による検診が行われています。

 海外では、マンモグラフィー検診を行うグループと行わないグループに分けて、死亡率などを比較し、検診の効果を調べる臨床研究が9件実施されました。それらを総合すると、検診を受けた場合、受けない場合に比べて、乳がんによる死亡の危険度が19%低下していました。

 乳がんで亡くなる人が10人いるとすれば、検診によって8人程度に減らせる、ということです。逆に言うと、10人のうち8人は、検診を受けても乳がんによる死亡を避けることができません。これが検診の効果の限界です。

 効果の実態については、別の見方もできます。

 研究に参加した人のうち、乳がんで死亡した割合は、検診を受けたグループで0・19%、受けないグループでは0・23%でした。検診によって、死亡の危険度が0・04ポイント(2500分の1)低下したわけです。2500人が検診を受けると、そのうち1人の乳がん死亡を防ぐことができる、ということになります。これが、検診で実際に利益が表れる人の割合です。

 また、乳がんを含めた死因全体では、検診を受けても受けなくても死亡率に差がありませんでした。乳がん検診を受けても寿命が延びるわけではありません。

 ここまでが、乳がん検診の有効性に関するデータです。

早期の乳がんには自然消失するケースも

  一方で、乳がん検診にはデメリットもあります。大きな問題は、治療の必要のない、「おとなしいがん」をたくさん見つけてしまうことです。

 検診が普及し始めた1980年代以降、約20年間で早期の乳がんの発症割合が2・5倍に増えました。これが検診による早期発見・早期治療で治ったとすれば、進行がんが減るはずです。しかし、実際には、進行がんはほとんど減りませんでした。

 それはなぜだったのでしょうか。

 早期の乳がんには、進行しないものや自然に消失するものがあります。放置しても命に別条ないがんで、発見や治療の必要がありません。これは専門的には「過剰診断」と呼ばれます。検診では、そうしたがんが多く見つかった、と考えられるのです。

 治療効果の分析に詳しい名郷直樹・武蔵国分寺公園クリニック院長(東京)は、「少なく見積もっても、検診で見つかる乳がんのうち3割は、治療の必要ない過剰診断のがん」と話します。

 そうしたがんでも治療が行われ、乳房が切除される場合もあります。いわば「切られ損」ですが、医師から「早く見つかってよかったですね」と言われるがんには、こうしたケースが含まれていると考えられます。

 ほかにも気になるデータがあります。検診で乳がんが見つかった人は、検診以外で乳がんが見つかった人より、「乳がん以外のがん」で死亡する割合が2・4倍高いことです。

 名郷医師は「断定できないが、過剰診断された乳がんで受けた放射線治療や抗がん剤治療の副作用の可能性も考えられる」と言います。

 こうした負の側面は、検診の際にはほとんど説明されていないのが実情です。

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tanaka200

田中秀一 (たなか・ひでかず)

 医療情報部(現医療部)、社会保障部、論説委員、編集局デスクを経て現職。長期連載「医療ルネサンス」を18年担当、現代医療の光と影に目を凝らしてきた。「納得の医療」「格差の是正」をテーマとしている。

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2件 のコメント

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医療のXYZ 癌の多次元性と連続性の解釈

寺田次郎 放射線科サッカー部スペイン代表

ファンタジスタと呼ばれるサッカーの名手は微細な時間と空間を切り取って、人の心さえ操る一般的ではない技術を持っています。 昔は才能と幸運に恵まれた...

ファンタジスタと呼ばれるサッカーの名手は微細な時間と空間を切り取って、人の心さえ操る一般的ではない技術を持っています。
昔は才能と幸運に恵まれた人だけの極めてまれなものでしたが、今は良い画像や文章が廉価になったことで、強い意思をもって追及する人間はその繊細な世界がわかり再現できるようになりました。
画像診断も同じです。

「何処を見て、何を考えるか?その論拠は何か?」
機器の精度や速度の進歩の中でも蓄積されたノウハウ=ピクチャーとビジョンが共有され、優秀な診断医が放射線科内外に増えていると思います。
世の中は科学的正論だけが通るわけではなく、何処を標準医療とするかの政治性もありますが、より高精度で人にやさしい医療を残し広めるには、お役所や政治家、そして、庶民が忙しい時間の中でも勉強し、そういう個人や組織を守る必要があります。
ちょうど懐かしい始末屋漫画が映画化されていますが、良い仕事をする人やその人が守りたいものを表に裏に守っていく必要があります。

種々の癌には連続性があります、人種、地域、家族歴=生活環境や食事の好み、同年代、特定物質や特定事件、などなど。
最近は人種や食事も多国籍のミックスが進む中で、リスクの特定も難しいです。
そして、同一リスクが複数臓器にもたらす問題、同一固形癌の転移の問題。
癌=悪=内科や外科の積極的治療対象という安易な発想が間違いだとわかります。

微細な癌や類似病変は「単独の癌」ではなく、多発癌の一つや遺伝子変異やエピジェネティクスの変化とも考えられ、現代の標準医療ではないものの、炎症や血栓症など癌および癌治療の副作用への対策まで含めた総合的な評価と治療方針が今後は必要で、データの蓄積も解釈も必要です。
ある検査が無意味かどうかの意味も考え方と時間と心の余裕次第です。
効率のための非効率なんて、何人の理解と賛同が得られるかわかりませんが。

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子宮頸がん検診の過剰診断も問題では?

LESS IS MORE

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子宮頸がんの検診の記述は誤解を招くのではないでしょうか? 細胞診についてランダム化比較試験での死亡率低下データはありませんし、子宮頸がんの前がん病変(上皮内癌や高度異形成CIN3)の過剰診断は深刻な問題です。日本の新しい子宮頸がん検診ガイドラインでも、「過剰診断の割合はCIN3+でほぼ50%」と記載していますが、過剰診断の害を考慮した推奨になっていないことも問題です。近年の受診率の向上により、日本の20~30代のCIN3は10倍以上に増えましたが、死亡率は低下していません。一方、CIN3の円錐切除による治療により、早産・流産・不妊のリスクが生じることは周知の事実です。20代は観察研究ですら死亡率低下のエビデンスがないことと、害があることは明らかなために、英国やカナダのように25歳からとしている国や、オランダのように30歳からとしている国もあります。検診間隔も3~5年が多いです。近年のキャンペーン「20歳になったら子宮頸がん検診を」は明らかに問題です。子宮頸がんについても、過剰診断の害が生じていることを知らせるべきではないでしょうか?

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