Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
医療・健康・介護のコラム
「寝つきがよい」「どこでも眠れる」はホントに健康的? それは危険なサインかも
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。「寝つきがよい」「どこでも眠れる」と睡眠自慢をする人がいますが、実は、それは体の「危険信号」かもしれません。
慢性的な睡眠不足の可能性
「寝つきが悪い」「枕が変わると眠れない」
不眠で悩む人からよく聞く訴えです。寝床に入ってから寝つくまでに1時間も2時間もかかる、枕が変わるなどのちょっとした環境変化があると眠れない……。そうなると、苦しい夜を過ごすことになります。
それに対して、「寝つきがよい」「どこでも眠れる」は、健康的な眠りの証拠に見えるかもしれません。でも本当でしょうか?
実は、睡眠時間が十分に満ち足りている人が、消灯してから寝つくまでに15分程度かかるのはざらにあることです。夜になって、眠りに入る体内環境がしっかり整ってから、眠気は緩やかに訪れます。寝床に入る時刻が早すぎると寝つくのに時間がかかり、逆に夜更かしをしたり睡眠不足をため込んでいたりすると、寝つきは非常に良くなります。日によって疲れ方も違うし、前夜の睡眠時間の長短などによって、寝つくまでの時間も日々変動するのが普通です。
「毎日、寝床に入るとあっという間に寝てしまう」
そのような人は、慢性的な睡眠不足を抱えている可能性があります。特に、仕事が早く終わった夜、普段よりも早く寝床に入ったときにも寝つきが良い場合は要注意です。詳しい説明は割愛しますが、睡眠は後ろにずらす(夜更かしをする)ことは簡単にできても、前にずらす(早寝をする)のは難しいという特徴があるからです。普段よりも早い時刻に就寝しても寝つきが良いのは睡眠不足の兆候です。
昼間でもよく眠れるのは「赤信号」
さらに、昼間に「どこでも眠れる」という場合は、体に赤信号がともっている証拠です。
睡眠障害の診断のために、昼間の眠気の強さを客観的に測定する検査があります(反復睡眠潜時検査)。この検査では日中、2時間おきに4、5回、暗くて静かな部屋で横になってもらい、脳波を測定して寝つくまでの時間を測定します。
睡眠時間を十分に確保している人の場合には、寝つくまでの平均時間は十数分です。測定した4、5回のうち1、2回は、検査が終了する20分後まで全く眠れないこともあります。夜中にたっぷり寝ているのだから当たり前ですね。一方、一晩徹夜をした翌日に同じ検査をすると、平均時間は2、3分にまで短縮します。1、2回は数十秒で寝てしまうこともあります。一般的に、平均8分未満で寝ついた場合、異常な眠気があると判定します。
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