子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
食物アレルギー(3)急に下痢や血便繰り返す
このシリーズでは、国立病院機構相模原病院臨床研究センター副臨床研究センター長の海老沢元宏さん(58)に聞きます。(聞き手・矢沢寛茂)
すくすくと育っていた赤ちゃんが、いきなり下痢や血便を繰り返すようになることがあります。こうした場合、消化管アレルギーが疑われます。
ある生後4か月の女児は、ほぼ母乳で育てられ、1か月健診でも体重が800グラム増えるなど成長は順調と思われました。ところが、その後、体重が増えず毎日下痢を繰り返し、3か月健診の時には1日に6回も水や泥のような便が出る状態でした。 壊死 性の腸炎など重い病気になっている恐れもあり、すぐに入院となりました。
胃腸の状態を内視鏡で調べたり、血液検査をしたりした結果、女児は、消化管アレルギーと診断されました。
消化管アレルギーは、ミルクや母乳を飲む新生児や乳児などにみられ、近年、患者の報告が増えています。胃腸などに炎症が起き、栄養の消化や吸収の機能が妨げられ、血便や下痢、体重減少などの症状が出ます。
詳しい原因は不明ですが、食べ物に含まれるたんぱく質などを「IgE抗体」という物質が認識して発症する一般の食物アレルギーと違い、白血球の一つのリンパ球が発症に関わっているとされます。数百人に1人の割合で重症の患者が出ますが、多くは1年以内に治ります。
女児のケースでは、症状が落ち着いた入院8日目から、アレルギー治療用の粉ミルクを与えると、症状は改善に向かいました。1か月で体重も増え始め、乳製品以外の離乳食が取れるようになり、2か月余りで退院できました。
消化管アレルギーを発症した子どもは、IgE抗体による食物アレルギーも合併することがあり、この女児も牛乳の食物アレルギーが見つかりました。適切な診断が大切です。
【略歴】
海老沢元宏(えびさわ・もとひろ)
小児科医、アレルギー専門医。東京慈恵医大卒。最新情報を発信する「食物アレルギー研究会」の世話人代表。
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