石蔵文信の「男と女の楽しい更年期!」
医療・健康・介護のコラム
私が「男性更年期外来」を始めた理由
はじめまして! 今回から「男と女の楽しい更年期!」を担当いたします石蔵文信です。更年期障害で長年、色々な症状に苦しめられ、とても楽しいとは感じられない方も多いと思いますが、このコラムを読んで少しでも明るく前向きな気持ちになっていただければ幸いです。
きっかけはバイアグラ
私は循環器内科の医師ですが、1999年にあの有名な米国ファイザー社の勃起不全治療薬「バイアグラ」が発売されたのをきっかけに、2001年、男性更年期外来を大阪市内で開設しました。「なぜ循環器の医師が?」と疑問に思う方も多々おられると思います。その経緯を少しお話ししましょう。
バイアグラが発売された当初は、ショック死など心臓病との関連が大きな話題となりました。実は、バイアグラは狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患で発作があった時に使用するニトログリセリンとの相性があまりよくないのです。同時に服用すると、比較的長い時間、血圧が下がり過ぎるなどの作用があり、ショックなどを引き起こす可能性があるため、今でも同時服用は禁忌です。そのため、「バイアグラは心臓に悪い」という評判がたちました。
当時私は、男性の性機能と循環器疾患の関連を研究していて、たまたまバイアグラ発売時、米国に留学していたのです。そこで帰国後、大阪大学で循環器疾患とバイアグラの関係について研究し始めました。その結果、ニトログリセリンとの併用は危険ですが、バイアグラ自体は、むしろ心臓に良い作用があることを報告しました。
更年期に伴う落ち込みや不安感
まもなく、バイアグラを安全に処方する外来を開設してほしいとの要望を受けて、大阪市内で外来を始めました。しかし、「勃起不全外来」などと命名すると患者さんが受診しにくいと思いましたので、当時漫画家のはらたいらさん(故人)が自分の体調不良を“男性更年期”として紹介して注目されたことや、泌尿器科の先生たちも元気のない男性に対して男性ホルモン補充の治療を行うようになってきたことから、「男性更年期外来」の名称を採用しました。
当初は「バイアグラを処方してほしいという中高年男性が受診されましたが、次第に精神的な落ち込みや不安感に体調不良を伴った患者さんが増えてきました。診察してみるとうつ状態や不安障害で困っておられるようでした。すでに数か所の精神科や心療内科に通っていて、それでも治らないので「更年期に違いない」と受診されるようです。そんな患者さんに、いまさら精神科や心療内科を紹介するわけにはいきませんので、精神医療の勉強をしながら手探りで、ゆっくりとお話を聞くことにしました。そうすると、徐々に患者さんの体調が改善してくるのです。更年期障害に漢方治療が有効なのも、このような傾聴効果が影響しているのかもしれません。
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