心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」
医療・健康・介護のコラム
虐待されて育ち、ヒーロー出現を夢見た32歳女性 夫のDVからも母子で逃れ…「本当のヒーローは誰か?」
ヒーローになる3条件とは?
「あなたには、ヒーローになる条件がありますね」
私がそう語りかけると、G代さんは驚いて目を見張った。
「私が……?」
「そう。最近、女性のヒーローが増えていますよね。かっこよくて、強くて、しなやかなヒーローたち。あなたは、そうなれる条件がそなわっている」
「でも……」
「ヒーローになる条件は三つあります。一つは、ほかの人が経験しないような、とんでもない苦労をすること。あなたもずいぶん苦しんできたでしょう?」
「確かに、大変でした」
「二つ目は、大変な状況から逃げないことです」
「でも、私は逃げ出しました。我慢できなくて、逃げ出してしまったんです」
「よく考えてみましょう。あなたの場合、夫のところにとどまることが『逃げ』でした。殴られっぱなしの状況を許すのではなく、子どもたちを救う『行動』を選んだこと。それが『問題』から逃げないことだった。私はそう思いますよ」
「……」
「あと一つ、最後の条件が残っています。これを達成すればヒーローになれる。その仕事が残っているんです。それは、何だと思いますか?」
「??」
G代さんは、しばらく考え込んだ。
「それは、『変身』することです」
「待つんじゃなくて、私が…」
「ヒーローは変身しますよね。敵に追い詰められ、死にそうな目にあって、どれだけ頑張っても、勝てそうもない。最後の最後に、『変身』する時が訪れて、ヒーローは真のヒーローになる。そうじゃないですか?」
G代さんは大きくうなずいた。
「あなたにとって、今が『変身』の時です。これまでの考え方や生き方を大きく変える。『変身』とはそういうことですよね? あなたは『子どもたちを守る』と誓った。そのために、すべてを捨ててここまで来た。だから、『変身』する時が訪れた。あなたや子どもたちを苦しめてきたもの。それに立ち向かい、問題を解決する時がようやく訪れたんです」
G代さんは、じっと思いにふけった。
「そうですね。ヒーローを待つんじゃなくて、私がヒーローになるべきだったんですね」
「子どもたちを守り通す『ヒーロー』、それは、あなたしかいないんですよ。だから、ここに来たんでしょう?」
G代さんは瞳を上げて、こちらをじっと見た。
彼女なりの「決意」が、そこに込められている。私には、そう思えたのだった。(梅谷薫 心療内科医)
*本文中の事例は、プライバシーに配慮して改変しています。
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めぐ
すごい良い話ですね。なんか元気でた。
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かっこいい
俺もヒーロー好き
良いこと言うなさすがです。 そうか逃げたと思ったかとが立ち向かっているというのは、よい言葉です。
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