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思春期の子どもを持つあなたに

コラム

第4部 強迫性障害(上)唾をとばしたクラスの男子がきっかけで不登校になった 中1女子

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妻との間で満たされない思いを、娘とのふれあいで満たす父親

 A子さんの両親は、まったく正反対の環境で育ったようです。

 一人っ子の父親は、小さい頃に母親を病気で亡くし、父方の祖父と曽祖母に育てられました。母の愛情に飢え、小学校入学の直前に曽祖母が亡くなってからは、ますます寂しい幼少時期を過ごしました。だからこそ、学校を卒業し、やがて結婚したときには、妻が仕事をやめて、家庭に入ってくれることを期待していたようです。

 一方の母親は、両親共働きの家庭で、兄や妹と一緒に育ちました。寂しい思いなどをすることもなく、頑張って勉強し、やがてキャリアウーマンになりました。結婚した後も精力的に仕事を続け、会社でも重要な役割を担うようになっていきました。

 自営業の父親は自宅で仕事をしています。そのため、自分の妻に、家庭の外の世界が広がっていることに、不安や寂しさ、それに焼き餅を感じていました。A子さんが生まれたときには、今度こそ「妻に仕事をやめてほしい」と思ったのですが、元々周囲に気を使うタイプのため、それを妻に伝えることはありませんでした。

 そして夫の希望は察していたものの、妻は自分の生きがいである仕事を続けました。

 徐々に夫婦の関係は希薄になっていきましたが、大きなけんかになったりはしませんでした。というのも、お互いの気持ちについて話し合うことはせず、寝室も別々。2人の間にトラブルが起きるきっかけがなかったためです。

 A子さんが保育園に通っていたとき、送り迎えをするのは父親の役割でした。小学校に上がる頃には、母親の仕事はますます忙しくなっていき、時々、地方への出張も入るようになりました。家庭内の炊事、洗濯、それにA子さんのお弁当の用意などは、父親が行うことが多くなりました。

 父親と娘の関係はどんどん強くなっていきました。

 A子さんがほしいというものは何でも与えるため、洋服でも本でも買い物には父と一緒に出かけました。自転車の乗り方を教え、週末は二人でサイクリングに行くようにもなりました。母親が出張で不在のときは、寂しいだろうからと一緒に寝ていました。

 父親は妻との間で満たされない思いを、娘とのふれあいで満たしていたわけです。

 こうして「父親と娘」「母親」という二つに分かれた家庭になりましたが、しかし母親としても出産後には、仕事を続けながら、自分なりに子育てをしてきたつもりでした。

 ところが、中学生になったA子さんに、予想もしなかった強迫症状が出現したのです。(関谷秀子 精神科医)

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shisyunki-prof200

せきや・ひでこ
精神科医、子どものこころ専門医。法政大学現代福祉学部教授。初台クリニック(東京・渋谷区)医師。前関東中央病院精神科部長。

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