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エッセイスト 安藤和津さん

一病息災

[エッセイスト 安藤和津さん]介護うつ(2)過労と睡眠不足で限界

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[エッセイスト 安藤和津さん]介護うつ(2)過労と睡眠不足で限界

 腐った食材も気にせずに食事を作るようになった母。頭部のMRI(磁気共鳴画像)検査を受けると、テニスボール大の脳腫瘍が見つかり、「手術はできません」と言われた。衝撃よりも母の異常が病気のせいとわかって 安堵あんど した。長い年月憎んできたことを悔やんだ。

 75歳を過ぎ、母の状態は悪化する。就寝時間がずれて夜7時に寝て、午前2時頃に「おなかがすいた」と声を上げ、15分おきに呼ばれる。74キロを支えてトイレに連れていくのが難しくなり、オムツをつけたが、忍びなかった。

 2003年、転倒がきっかけで寝たきりに。動けない分、楽になったが、深夜にタンの吸引が加わった。母の世話の後は午前3時に家族の食事を作って、わずかな睡眠時間で仕事へ。介護の厳しさに加え、家計も苦しかった。

 夫で俳優の奥田瑛二さん(68)は50歳を節目に映画製作と監督業に乗り出した。海外の映画祭で受賞するなど評価を受けたが、収支は赤字。知人にだまされて借金も作った。「映画関連の請求書は次々と届くし、介護費用も必要なので家計は火の車。働かないわけにはいかなくて」

 当時、50歳代半ば。過労に睡眠不足も重なり心身ともに限界に来ていた。テレビ番組出演中にコメントが出ない。文章が書けない。仕事をドタキャン。このまま死にたいという思いも。知人の勧めで心療内科を受診すると、「介護うつ」と診断された。

  エッセイスト 安藤 和津(かづ) さん(70)

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