Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」
医療・健康・介護のコラム
避けたかった「アスピリン」飲んじゃった! 成分欄に記載なく
記載の仕方は不統一 利用者は薬剤師に確認を
アスピリン入り市販薬の添付文書には、実際、どのように記載されているのでしょうか。該当する市販薬103品の添付文書から、成分欄の記載をそのまま抜き出して、まとめてみました。
市販薬の利用者視点に立つと、「アスピリン(アセチルサリチル酸)」のように併記するのが親切ではないかと思うのですが、実際にはそうはなっていません。用語が統一されていないことを認識し、具体的な対策を立てる必要があるのではないかと思います。
まず、市販薬を購入する際、必ず市販薬の成分欄をチェックし、分からないことがあれば薬剤師や登録販売者の方に質問をする習慣をつけることが大切です。
そして、自宅など身近にある市販薬を不意に使う機会があることを考えると、面倒ではありますが、「アスピリン=アセチルサリチル酸」と、普段から覚えておくことも大切です。「知って安心」につながります。
出血時、アスピリン服用でさらに出血が止まりにくく
アスピリンについて、もう少し詳しく説明します。
アスピリンは、高くなった体温を下げる(解熱)、痛みを抑える(鎮痛)、炎症を抑える(抗炎症作用)、出血を止めるための血小板の働きを抑え、血栓を作らないようにする(抗血小板作用)、など多くの効果があります。抗血小板作用の効果は7~10日ほど続くことが知られています。そのため、出血する危険性のある医療行為、例えば、手術や胃カメラ検査、大腸カメラ検査の前に、医師などから「アスピリン入り市販薬」を飲まないようにと言われた方もいるのではないかと思います。アスピリンは、市販薬では解熱鎮痛薬として使われています。
今回のケースで出てきたデング熱は2014年に流行があり、大きなニュースになりました。デング熱では発熱や頭痛、関節痛など、「かぜかな?」と思う症状が出るため、発症当初はかぜ薬や解熱鎮痛薬を使いたくなりがちです。
デング熱は悪化すると、出血が止まりにくくなることがある感染症ですので、そこにアスピリンの抗血小板作用が加わると、出血がさらに止まりにくくなってしまいます。さらに、アスピリンの副作用として胃・十二指腸潰瘍などの胃腸障害があり、そこが出血源となることもあります。これらの副作用被害を避けるためにアスピリンを避けましょうと、新聞やテレビなどのマスメディアで注意喚起された、というわけです。
今回のケースでは、アスピリン以外にも、イブプロフェンとロキソプロフェンが出てきましたが、これらについては、またの機会に説明します。(医師 平 憲二)
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同じ薬剤に複数の呼称があって、合剤だとすべての成分を押さえることは困難で、そのすべてを医師や薬剤師が把握することは患者の勤勉さなしには困難です。...
同じ薬剤に複数の呼称があって、合剤だとすべての成分を押さえることは困難で、そのすべてを医師や薬剤師が把握することは患者の勤勉さなしには困難です。
一方で、薬剤の相互作用や疾患との相性なども考慮が難しい部分があります。
その中で、与えられた情報と、現実の症状や検査所見が乖離した時の不具合を考えるとAI任せにするのは怖い部分があります。
いずれAIがそういうミッシングリンクを繋いでくる可能性もありますが、想定外の情報に対して、様々な知識や経験を叩き込んだ人間の強さが存在します。
もっとも、医師がそんな目立つ仕事をしている時は誰かが不幸になったり、不幸になりかけているわけなので、早く、社会が進歩してほしいですけどね。
カンファレンスの厄介症例の影では、必ず不幸な人と難しい社会的な問題が存在します。
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