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Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」

医療・健康・介護のコラム

避けたかった「アスピリン」飲んじゃった! 成分欄に記載なく

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 市販薬を巡るトラブルは、何も副作用だけに限りません。今回のケースは、市販薬の説明文をちゃんと読んでいたのに慌ててしまったというお話です。

 イラスト 西島秀慎

イラスト 西島秀慎

 20代の女性がある夏の日、デング熱の流行を知らせるニュースをテレビで見ていました。その中で専門家が、デング熱に感染した場合はアスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンなどが成分に含まれている薬の服用を避けるように解説していました。

 ある日、発熱とだるさの症状があり、自宅にある市販の解熱鎮痛薬を飲みました。最近、近くの公園で蚊にさされていたので、デング熱に感染した可能性も考え、説明文の成分欄も飲む前に確認しておきました。「アスピリン」や「イブプロフェン」「ロキソプロフェン」といった表示はありませんでした。ところが、その後、知人から、成分欄に表示されていた「アセチルサリチル酸」はアスピリンのことだと知らされ、不安な気持ちになり、近くの病院に駆け込みました。

「アセチルサリチル酸」とだけ表示している薬も

 アスピリンは、新しい研究成果などでニュースやバラエティー番組でもよく取り上げられる成分ですので、聞いたことがある方も多いのではないかと思います。アスピリンは、アセチルサリチル酸とも呼ばれていますが、最近ではアスピリンの呼称がメジャーになっています。

 アスピリンを含んだ市販薬は価格もお手頃で、よく売れています。ところが、その外箱や添付文書には、「アセチルサリチル酸」と書かれているだけで、「アスピリン」と書かれていない市販薬の製品も存在します。しかし、マスメディアでは「アスピリン」の方を使うことが多く、「アセチルサリチル酸」はほとんど使われません。医療現場でも「アスピリン」と呼ぶことが一般的です。

 そのため、今回のケースの女性のように、アスピリンを避けようと市販薬の説明文をちゃんと読んだにもかかわらず、誤って「アスピリン入りの市販薬」を飲んでしまうということが起きても、何の不思議もありません。

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dr.hira-prof150

平 憲二(ひら けんじ)
 1966年、宮崎県生まれ。総合内科専門医。株式会社プラメドプラス代表取締役。91年、宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒。2001年、京都大学大学院医学研究科博士課程内科系専攻修了(臨床疫学)。03年、京都大学病院総合診療科助手。05年に株式会社プラメド、13年に同プラメドプラス設立。著書に「クスリ早見帖ブック 市販薬354」(南山堂)、「クスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方」(PHP研究所)、「クスリ早見帖ポッケ かぜ・解熱鎮痛・咳止め・鼻炎の市販薬」(大垣書店)。

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アナログとデジタルの交差点とAIの意味

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

同じ薬剤に複数の呼称があって、合剤だとすべての成分を押さえることは困難で、そのすべてを医師や薬剤師が把握することは患者の勤勉さなしには困難です。...

同じ薬剤に複数の呼称があって、合剤だとすべての成分を押さえることは困難で、そのすべてを医師や薬剤師が把握することは患者の勤勉さなしには困難です。
一方で、薬剤の相互作用や疾患との相性なども考慮が難しい部分があります。

その中で、与えられた情報と、現実の症状や検査所見が乖離した時の不具合を考えるとAI任せにするのは怖い部分があります。
いずれAIがそういうミッシングリンクを繋いでくる可能性もありますが、想定外の情報に対して、様々な知識や経験を叩き込んだ人間の強さが存在します。

もっとも、医師がそんな目立つ仕事をしている時は誰かが不幸になったり、不幸になりかけているわけなので、早く、社会が進歩してほしいですけどね。

カンファレンスの厄介症例の影では、必ず不幸な人と難しい社会的な問題が存在します。

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